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2007/09/30

何年も前のことである。
あるデパートでバナナの展示会があった。
その会場で「バナナの原種」なるものが展示されていた。
「種子が多くて、とても食べられるものではない。」という説明がついていたが、
そばにあったバナナはとっても小さくて、しなびていて、見るだけで触ることもできず、
「そんなものか」と思っただけだった。
でも そこの説明に
「人類が栽培してきた植物の中でもっとも古いものの1つで、1万年くらいの歴史を持つ」
と書いてあったのを今でも鮮明に覚えている。

バナナの原種はマレーシアなどの東南アジアにあったらしいが、
長い歴史の中で世界のあちらこちらに広まり、栽培されてきたらしい。
古代エジプトはもちろん、アメリカ大陸には有史以前に伝わった形跡があるという。

いずれにしても、「私にはバナナの原種にお目にかかることは無い」と今までずっと思い続けてきた。

2007年9月にインドネシアのボゴール植物園で、
バナナの原種に近いと言われる野生のバナナの花と果実を見ることができた。


博士が 野生のバナナの果実を見せてくださった。
Musa acuminata

普通のバナナより小さい。 輪切りにして中の様子を見た。
固くてなかなか切れない。
それは中に種子がびっしり詰まっていて
その種子を切らなければならなかったからだ。
中は3室になっていると言うが、
言われてみればそんな気がする。
種子はどうやら縦に6列になって
入っているようだ。各室に2列ということか。

触るだけで白い汁が出てきてべたべたして
どうしようもない。
皮は簡単にむけた。
中の→の部分が、現在われわれが
食べている部分(果肉)。
肉質?のようで白い。
このバナナは大部分が種子だから、
この部分はわずかしかないが、
とにかく触るだけでべたべた。
手についた白い汁をティッシュで拭こうとしても、
その汁が強力な糊のようで、紙が指についてしまう。
とてもとても食べられるようなものではない。

何とか種子を取り出したが、種子の形は分からない。 白い部分を取り去って見たが、形は一定ではなく
大きさも少しずつ違うようだ。


H博士の話

この種は現在の食用バナナの原種と考えられている。
熱帯の住人が、昔、この種の野生品の中から、突然変異で種無しになった固体(3倍体)を見つけて栽培し、
それが長い間、栄養繁殖で受け継がれてきた。
その過程で「種無し」という性質を保ちながら、たくさんの品種群に分化してきた。
熱帯の人々へ果たしてきたバナナの役割は計り知れない。
開花・結実を終えたシュートは枯れてしまい、
代わってまた根元から新しいシュートが伸びてくることを繰り返す。


きれいな花が咲いていた。果実も生っていた。
まだ雌花群が続いている。
やがてこのつぼみは、雄花群が現れてくるのだろう。
ピンク色をしたものは、花弁ではなく、「包」(包状葉ともいう)といわれるもの。
この中に雌花がたくさん入っていて、やがてこれが1房のバナナになる。

これは原種に近い野生のものだけれど
食用のバナナは、このつぼみがやがて雄花群に変わると、つぼみを切り落とし、
野菜としてスーパーなどで売っているのを見たことがある。
食用バナナは受精はしないから、
雄花は野菜として有効活用しているということだろう。



このバナナにはどのくらいの数の種子が入っているのだろうか、調べたくなった。
そこで、バナナをビニール袋に入れて5日間置いた。
その後、川をむいて中身だけ水に3日間つけておいた。
その後、取り出したら、もうべたべたは取れていて、
手で自由に触ることができた。

ビニールの袋に5日間入れたあと取り出し、
皮をむいた。簡単にむけた。
中身だけを水につけた。
3日間水につけた後、取り出して並べてみた。
もうべたべたは無い。水に溶けたのだろう。
何とか、6列に並べることができた。
これは3室に2列ずつ縦に並んで入っていたと
いうことになるのだろう。


早速、水できれいに洗って、種子だけを取り出した。
とっても固い種子である。

すべての種子を紙の上に並べた。
私がいつもやっている方法で、数を調べるためだ。

あの1本のバナナに
こんなにたくさんの種子が入っていたのだ。

種子の大きさも形も1つ1つみな違う。
方眼は1mm。
大きいものは5mm方眼からわずかにはみ出す。
どれも丸い「へそ」(維管束がついていた後)が見える。
数の調べ方。
紙の上に種子をばら撒き、5個ずつ囲んで行く。
終わったら、種子を別な入れ物に移す。
まるで白地図のようだ。
1つ1つの領域にはじから5・10・15と書き込んでいく。
端数が出たら欄外に個数をメモしておく。
今回は端数が無く、最後の領域には「145」
と記入された。
つまりこのバナナの種子は145個であった。




バナナの先祖がえりか

その後日本に帰国してから、こんなことがあった。
バナナの「先祖がえり」だろうか。
いつもの店で、いつものように、いつもの大きさのバナナを、1房買った。
買ったときは、黄色だったが、いつものようにだんだん黒いしみが現れてきた。
ところが、1房の中にわずかに小さいバナナが1本混じっていた。
毎日食べていって 最後にその小さいバナナが残った。
食べようとして、手に取ると固い。 よく見ると表面にはしみができていない。

明らかにおかしい。いままで 気が付かなかったのか、それとも初めてなのか?

固くて食べられそうも無いので、半分の輪切りにした。
野生のバナナを調べた後だから、興味が膨らんだ。
最後に私が考えたことは「先祖がえり」ではないか、ということであるが、どういうことなのか分からない。

小さい・固い・しみができていない。
調べようと、意欲がわく。

種子が殆どないから簡単に切れた。

今度こそ3室であることがはっきり。
退化した種子が見える。

→の部分が黄色くて固い。
とても食べられない。
退化した種子が縦に並んでいる。 四角で囲んでいるようなものが
6個見えた。
→の部分が1室。
これが縦に2つに割れるので、
6本あることになる。


バナナには、現在いろいろな栽培品種がある。
私が今までで 面白いと思ったのは、土地の人が「天ぷら用のバナナ」と言っている大きなバナナである。
以前に撮った画像が見つかったら、公開したい。


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