ミニ観察

2007/01/01

数年前、ある試験で「ペグとは何か」という内容の問題が出た。
勉強不足の私はそれまで聞いたことさえなかった。

「ペグ」は訳語がなくそのものを使っているようで、いずれの本も「ペグ」として使われているようだ。

そもそも「ペグ」とはどんな意味なのか? 
英和辞典で調べてみると次のようなことだった。                     
・靴の底皮などを留める木のくぎ。          
・帽子やオーバーなどを掛けるための掛けくぎ、
・tent pegも同じ。

そこで「tent peg」を調べてみると
・テントを張るくい。

以上のようなことから「ペグ」は「引っ掛けるもの」という意味で使われ、
植物用語として使われてきたらしいことが分かった。



植物用語の「ペグ」とは、
ウリ科の種子が発芽する時に出現する「いぼのような突起」のことであることも分かった。
 
ペグができるということは、
ウリ科植物に見られる特徴で、かなり古い時から知られていたようで
多くの学者が研究しているそうである。



種子が発芽するにはその植物によって単純なものから複雑なものなどいろいろな発芽の方法があるが、
一般的に考えられる発芽の順序は
まず最初に珠孔から幼根が出て下に向かって伸びて行く。
次に胚軸が出てきて上の方へ伸びていき
その先に付いているふたば(子葉)を種皮の中から引っ張り出すような感じで引き抜きふたばが出てくる。

問題はそのふたばが種皮の中から抜け出す時であり、
なんらかの方法がなければ無事に種皮から抜け出せないだろう。
もしうまく抜け出せなければ、ふたばは種皮をくっつけたまま伸びていくことになり
その後の生育に支障が出るかも知れない。
その何らかの方法の1つがウリ科では「ペグ」ということになる。



このことを知ってから、むずかしいことはさておき、
そのpegといわれる「いぼのような引っ掛かり」を見たいと思っていた。




2003年7月、北海道で夕張メロンを買った。
家に帰り切ってみると、種子が完熟しているようで大きく膨らんでいる。
メロンは栽培品種が多くこの種子では発芽しないだろうと思っていたが、
「だめでもともと」とばかり種子をきれいに洗った。


まず実験の方法を考えようと、とりあえず種子をあきびんに入れた。

忙しい日が続き2〜3日が過ぎた。
ふと思い出して見てみると、もうすでに発芽が始まっている。
狭いびんに押し込められてひしめき合いながら発芽している。


                  
もう実験の方法を考える段階は過ぎてしまった。
止むを得ず発芽しかけた種子をお皿やびんに移して観察した。

もうすでに幼根が出て胚軸が伸びだしているものがたくさんある。
よく見ると幼根と胚軸の間に丸いいぼのようなものがついている。
これがペグなのだ。とても可愛らしいいぼである。
種子が大きかったせいか、ペグは肉眼でもはっきり見えた。

幼根と胚軸の間に
できた突起。
これがペグである。


その後も皿やびんなどに移して観察を続けたので発芽の様子を見ることができた。

ペグは種子の中に入り込んでいる形になっている。
ペグは種皮の中で
種皮をいぼに引っ掛けて
しっかり押さえている。

硬い2枚の種皮のうちの1枚をペグにしっかりと引っ掛けている。
もう1枚の種皮は合わさり目がだんだん割れてきている。
胚軸は腰を曲げるように
丸くなって
ふたばを
引き抜こうとしている。


胚軸は硬いからの中いっぱいにつまっている大きなふたばを取り出すわけだから、たいへんだ。
ペグは種皮の一方をしっかり押さえ、
胚軸は丸くなった体をまっすぐに伸ばす力を利用しての
「ふたば引き抜き」なのだろう。
両者が一体となって初めて発芽が成功する。

このどちらか一方がだめになればどうなるのだろうか。
例えば胚軸が折れるとか、おさえていたペグがはずれるとか。

種皮がペグからはずれてしまいふたばは種皮を付けたまま胚軸が伸びているものがあった。

種皮がペグから
はずれてしまった。
ふたばは種皮を付け
たまま。
ペグがはずれてしまって
ふたばは抜けられず
種皮をつけたまま伸びていく。


また他に考えられることは、
ペグと胚軸の働きがうまく機能しても、種皮が割れずにふたばが抜けられないことがあるかもしれない。

とにかく植物にとって「発芽」は危険を伴うたいへんなことなのだということをしみじみと思う実験であった。


発芽が終わるとペグは用済みとなり、枯れるような感じで、胚軸や幼根の中に吸収されて行くようだ。

発芽が終わるとペグは
用済みとなり枯れるような
感じで胚軸や幼根の中に
吸収されていくような気がする。




今回実験の方法がめちゃめちゃで、大切なデータがうまく得られなかったが、
はじめに種子を置くのに種子の向きも考えるつもりでいた。
種子の向きによってはペグができてもうまく引っかからないことがあるような気がする。
時にはペグが出来ずに終わってしまうこともあるかもしれない。
次回もし実験する場合は、それらを考えて方法を決めたいと思う。



ところで、このペグのことを調べていると次のようなたいへんむずかしいことが考えられているということが分かった。

ペグができることは重力に関係があるらしい。とか。
スペースシャトルの中の無重力の中で実験をした。とか。
将来宇宙基地で植物を育てるための実験だ。とか。
このようなことを調べるのは「宇宙植物学」という新しい分野の学問である。とか。
私にはとても難しくて分からないことだらけである。

しかし、ウリ科のペグについては子供でも大人でも誰でもできる身の回りの
簡単な実験でありながらこんな不思議なことが
目で確かめ感動を得ることができるということに注目したい。



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