BOOK LAND 5





三億円事件

一橋 文哉

ICHIHASHI FUMIYA

新潮社 ¥1600

<エピローグ>
僕は2000年の末にフジテレビで放送されたドラマ「3億円事件」を見て、初めて
この本の存在を知った。 以前からフジTV社内でも、この本がかなり話題にな
っていたらしく、ドラマ化されたのもうなずけます。 とにかく このドラマは素晴らし
かった!! マジ、フジテレビも、なかなかやるじゃないかぁ〜!! と驚嘆した。
だからノンフィクションの原作を読んだのは、僕の場合はドラマを見た後になる。

で、”三億円事件”とは1968年12月10日、現金輸送車がニセの”白バイ警官”
に襲撃され現金を奪われ、今だ真相が闇に包まれたままの本当にあった事件
である。 当時の金で”三億円”というのは、現在だと”10億円”ぐらいに相当する
ようだ。

<XF228632A>
さすがに本(原作)のほうが、細かく事件が書かれています。最初 著者の所に
(ヨシダ)と名乗る謎の男から電話があり、その内容は”昔の知り合いで、犯人が
奪った金を持っている男がいる” という凄い情報だった。当時 警察は奪われた
紙幣のとうし番号を公開したため、強奪された金かどうかチェック出来るのだ。
その男は、昔(事件当時) 米軍基地の街、福生市にいたらしい...。

たちまち のめりこんでいった著者は ”問題の紙幣”を持っていた男と当時付き
合っていた元不良グループの人間からの聞き込み取材で、次第に犯人グループ
をあぶりだしていく...。 その男とは「ジョー」と呼ばれる男で、米軍関係者の米国
人の父と日本人女性の間に生まれたハーフ(ドラマではTOKIOの長瀬くん)。当時
二十歳を過ぎていて 米軍基地周辺の不良グループのリーダーをやっていた男。
強奪した金の”保管役”だったらしい。

そしてジョーが弟のように可愛がっていた少年が「ロク」で、(ドラマでは松田龍平くん)
当時18歳、車やオートバイの運転が抜群にうまかった。 彼が ニセ”白バイ”警官に
紛して強奪した実行犯だったようだ。 事件の一ヶ月後 行方不明になり二ヶ月後には
名古屋にいた事が分かっているが、1970年に謎の自動車事故で死亡している。

そして一連の事件を計画.指揮したと思われる”黒幕”が、彼らから「先生」と言われて
慕われていたマツダと言う男(ドラマではビートたけし さん)。当時34歳、 なんと彼は
元”白バイ警官”で、警察.銀行.某電気メーカーに恨みを持っていた。仕事の関係で
米軍基地周辺を出入りしてる内ジョー らと知り合ったようだ。 事件後は会社を転々とし、
なぜか 名古屋の玩具メーカーや問屋に3年勤めている..。

この本の結論から言ってしまうと以上の3人が”3億円事件”の真犯人であった!!!

<モンタージュ写真>
”3億円事件”と聞いて思い浮かべるのは、あの白バイ警官の若い男のモンタージュ
写真の人が多いと思われるが、これが”インチキ”だった事実を容赦なく暴いている。
(ドラマでは、ちょっと分かりずらかった)。警察が当時疑っていたSという19歳の不良
少年に似た写真(事件とまったく関係ない他の事故で死亡した男の写真)を警察が選び
モンタージュ写真として公表していたのだ..。 このインチキ写真で6年間も市民を
だまし続けたのである。

<金はどこに 隠した?>
事件の発生する約一年前から犯人は”布石”とも言える脅迫状を送り付け、犯行に
使用するオートバイや車を盗み、警察の動きを探っている。 また事件発生後、警察は
血眼となって消えた3億円を探したが、発見出来なかった。 しかし警察でも入り込め
なかった”聖域”が存在した。それは米軍基地だった。 犯人は一時 基地内のどこかに
隠し、ほとぼりがさめてからどこかの山中に埋めたようだ。 またジョーは自由に基地内
を出入り出来たようだ。

<対決>
著者&取材班は「先生」がロス(LA)にいることをつかみ、遂にインタビューに成功する。
このインタビューは二日間6時間にもおよび、まるで”カクトウギ”みたいだ。これは凄い。
ここは本を読んで楽しんで頂く事にしましょう。 「先生(マツダ)」 が真犯人かどうかは、
読者が判断していいんじゃないかと思う。

ちなみに「先生」と「ジョー」は1987年に一緒に渡米したようだ。 そして二人で玩具の卸売
会社を設立したが失敗し、2年で閉鎖。 その後は宝石店などを経営している。(ドラマでも
描かれていたが、先生の仕事はかなり怪しい密輸などにも からんでいるようだ)。一時は
ビバリーヒルズに豪邸をかまえ、高級車を乗り回すほど羽振りがよかった「先生」も ”デリバ
ティブ”に手を出して失敗し、ドラマでは かなり金に困っている様にも描かれていた。
取材中、先生の口からポロリと出た”ジョーならティファナのホテルにいるよ..”。
著者&取材班は、急きょ メキシコに向かう事になる。

<サンディエゴ>
取材班はメキシコでジョーの足取りを追ったが、遂に接触する事は出来なかった。 しかし
一年前まで住んでいた安アパートまでたどり着いた。 聞き込みによると、どうも麻薬の
密売人にまで、なり下がってしまったらしい。 (ドラマでは麻薬でボロボロになった廃人の
ように描かれている)。 また新しい情報が入り、4年ほど前まではジョーはサンディエゴ
でクルーザーを所有していて、何かあると よく海を見ていたという事だった..。 またジョー
は いつも二つのペンダントを首から下げていて、それはMJRと刻印された弾丸を加工
して作ったものだった。 Mはマツダ、Jはジョー、Rはロクを意味するようだ。

<エピローグ>
ドラマの「先生」は最後の最後、一本指を立てて自分の犯行を認める。しかし実際の
インタビューでは最後まで告白する事は無かった。 またドラマでは3人の男の夢と友情
という側面が強く描かれていたように思う。 しかし本(事実)を読めば、その中でも確執や
裏切りがあり、決して”純粋”なものでは無かった事が分かるだろう。

<最後の謎>
原作のほうでは 実行犯はあくまで若い「ロク」であるが、ドラマではビートたけしさんが
単独で強奪している。 これななぜなんだろう? おそらく ”三億事件=モンタージュ写真
の若い男”という神話を、壊したかったからではないか? それにしても、 たけしさんの
白バイ警官の姿....はまっていた。



by TETSUYA TSUKADA







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