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本こそ明日を考え今日を生きる知恵、活力。沈滞ムードを吹き飛ばします。


トヨタ生産方式‐脱規模の経営をめざして‐ 著者:大野耐一 ダイヤモンド社刊 ISBN4-478-46001-9 C2034 定価1400円 1978年
終戦後まもなく、アメリカの自動車工場を視察してきた豊田喜一郎が、
当時、機械工場長であった大野耐一に謎めいた言葉をつぶやいた。
「ジャスト・イン・タイム」と
大野耐一は、その言葉の実現をめざして生涯、創意工夫をつづけることになる。

トヨタ生産方式、すなわちJUST IN TIME(同期生産)方式は難解である。
どうして難解かというと、まず「つくりすぎのムダの排除」や「後工程引取り」「カンバン」「あんどん」
などなどいろんな用語がでてくる。
また創案者の大野氏が現場出身者であったためか、明確な階層構造、体系化されていなかったことも
混乱を生じやすい原因であるような気がする。
また、多くの革新的なアイデアは一般常識と反対のことを言っていることがよくあり、
普通、余裕をみて余分めに部品を作っておいたりするのは現場感覚としてよくあることで、
大野氏はそれがそもそもの間違いであると言っているのである。
「必要なものを必要なときに必要なだけ作る」
そのためにはどうすればよいのか。
JIT実現のためには過酷な要求である不良品0にしなければならず、
そのため現場の人間が普通恐れるはずのラインストップすら恐れるなと説いている。
大野氏の言っていることを実際にやろうとすると必ず周囲と摩擦を引き起こすことに
なるだろう。
私の場合、10年以上かかってようやく大野氏が本当に言いたかったであろう部分が見えてきたような気がしましたが、
みなさんも自問自答しながら、あるいは周囲と摩擦を引き起こしながら、
トヨタ生産方式とは何か考えてみてください。
おそらく多くの人には導入にあたってまったく理解されないと思います。

また生産現場と関係のない方にとっても何か得られるものがあると思いますので
一読お勧めします。新しい読み方としては、
地球環境の観点からトヨタ生産方式の有用性を考えてみるのも一考でしょう。

大野氏が書いた本はほとんど絶版となり、現在入手できるのはこの本一冊のみです。
私はいままで必要なときに必要なだけ本屋で立ち読みしてきたのですが、、、
(2000.4.23)
得手に帆あげて 著者:本田宗一郎 三笠書房刊 ISBN4-8379-0065-8 C0134 定価440円 1985
「本田宗一郎の人生哲学」
本田宗一郎氏が亡くなってから何年たったろうか?
鍛冶屋に生まれた著者が、自動車修理工から身を起こして、ピストンリングの開発に乗り出し、オートバイの生産から乗用車まで世界のHONDAを築き上げるまで綴った自叙伝。
本田宗一郎いわく「得手でもない仕事をやればただ苦痛なだけだ。柄でもない生活を営めば、そこには休息も慰安も何もない。自分の個性を開発し、個性の特質を充分に生かして、楽しく、能率よく暮らすことだ...」
「欠陥の多い人間は特徴も多い人間である」
「機構の中に閥があるのは、そこに人間平等の精神が欠けているということだ」
「需要がそこにあるのではない。われわれがそこに需要をつくりだすのだ」
ホンダイズムとは本田宗一郎の崇高な精神そのものである。
最近話題となった2足歩行ロボットにしてもどうして自動車会社がロボットを?と考えるのが普通だろうが、
創業者のチャレンジ精神を受け継いでいるとすると、これは容易に理解できるのである。

男が志を立てるときこの著を読み、また志半ばにして挫折したときも今一度この著を読もうではないか。
(2000.3.5)
世界にないものを創れ 著者:多田則明 コスモトゥーワン刊 ISBN4-906361-79-X C0055 定価1600円
「日本コカコーラ、シャープ、NECによる携帯用コンピュータ開発物語」

この本はコンピュータ関連の本の紹介の方に入れてもよいのですが、向こうの方も満杯になってきたし、まったく新しいコンセプトのものがどのようにして誕生するのか、開発組織はどうあるべきなのか考えるときこの一冊は外せないなと考え、こちらに入れます。

60年代後期、日本コカコーラのルートセールスマンはディーラーをまわったあとの伝票の集計作業に大きな手間と時間をとられていた。この清算業務を軽減できれば一人あたりがカバーできるディーラーの量が増えるのではないかと日本コカコーラの研究開発部長岩村は考察した。岩村部長は入社したばかりの白井に携帯入力端末機「ベルピット」を開発するように命じる。当時、大型コンピュータの中央集中方式が主流であったなか、白井は分散型処理の携帯端末の仕様をまとめ、コンピュータ会社を尋ねてまわり、その13社目がシャープであった。
ベルピット開発の中で数々のすばらしいアイデアが生また。インテルとほぼ同時期に4ビットMPUの開発が行われ、小型パルスモータで印字プリンターを駆動させたり、データ記憶にマイクロカセットを使用するアイデアなどが生まれた。
ベルピットで使用されたMPUの論理設計はシャープが行い、製造はNECが行った。NECの大内集積回路事業部長が設計図面をみたとき「これ、絶対うちでやる!」といってその場で決断した。このときの大内部長の決断が後のNECのMPUやパーソナル・コンピュータの開発に大きな影響を与えた。
コカコーラ、シャープ、NEC、名だたる会社がその道のトップに君臨できるのも単なる偶然ではないことが、この本を読めば納得できる。ベルピットから生まれたMPUがその後、発展し、テレビゲームやゲームボーイに使用され、パソコンに使用された。携帯端末の思想は現在でもザウルスに流れている。

日本コカコーラ、シャープ、NECの3社ともに共通する開発チームの条件がみられた。
・開発チームがきわめて小さかった。
・開発チームの主力は20代から30代前半の若いメンバーによって構成されていた。
・開発の長は度重なる会議や複雑な決済手順を踏まず、その場で重要な事項を決断した。
・開発をつき動かしたのは開発対象が持つ重要性、必要性および開発者の情熱であった。
(2000.3.4)
勉強の仕方 著者:米長邦雄,羽生善治 祥伝社ISBN4-396-31119-2 C0195定価543円
「プロ棋士の驚異的な集中力」

日本プロ将棋界を代表する二人の棋士の対談集。
羽生4冠の言うには、子どものころ米長永世棋聖の書いた難解な詰め将棋の本を6年から7年かけて全部解いたそうだ。この辺の持続的な集中力が普通の人間をはるかに超えているところで、普通なら途中で飽きてしまうか、プロになっても食える保証のないような厳しい将棋の世界にあえて飛び込もうなどとしないで、平凡なサラリーマンの道を選ぶのだろう。
また、米長永世棋聖は弟子のとき師匠に向かってあなたの将棋を真似ていたら所詮あなたどまりじゃないですかなどと反発していたそうだが、これもなかなか言えない文句です。
将棋は常に勝者と敗者がはっきりするので弟子が師匠を超えてしまうという現象が常に起こり得るのでしょう。実力主義の見本としてよいことであります。
歳月は流れて米長永世棋聖も弟子をとるようになり、先崎学という弟子が小学生名人戦に出たいといってきたとき、おまえはプロに弟子入りしたのだからプロだ。アマチュアの楽しみを奪ってはならんといって封印されてしまう。このときの先崎の「どうして?」といった気持ちが後々まで尾を引くことになる。ひょっとして将棋の歴史を変えてしまっているのかもしれない。結局、先崎と羽生4冠の対決は実現せず、羽生4冠が小学生6年のとき名人戦に優勝し、プロの道へ突入するきっかけとなる。
羽生4冠は将棋をスポーツのように考え、将棋に24時間どっぷり漬かるような生活はいやだと言っている。最近防衛戦以外のタイトル戦には出なくなったのもこういった考え方が原因だろう。
語る内容も最善手を求める将棋マシンのような感じであまりジョークのきいたようなことは言わない。
一方、米長永世棋聖は発言にやたら仏典からの引用が多く、近じかなにか宗教でもはじめる気があるのかなといった印象がある。
羽生4冠が将棋は定石の積み重ねでいままで定石が覆ったことはないが、最善手を突き詰めてゆけばそれが覆るようなことがあるかもしれないと言っている。

将棋で最善手が一手目からわかり、後手も最善手で応じるようなことを続けると最後には先手、後手のどちらが勝つのだろうか?
(2000.3.2)

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