1.非常に自由な雰囲気ということでしたが,これは変わっていませんか。
校則も厳しくない。アルバイトもOK。苫小牧は大学生が少ないので,家庭教師をやっている人もいる。後はコンビニやガソリンスタンドなどでバイトをしている人もいる。バイクの免許は届け出ると取らせてくれる。自動車の免許は4年生になるときの春休みから,届け出をすれば取ってもよい。ただし,通学などの事情があれば3年生になってすぐに取ることもできる。*1
自分が1年生のときは,1年生だけ校舎内で中学の制服を着用するように言われたが,今は完全に私服。同じ階に4・5年生がいて,生活態度や試験の成績が悪いと,2,3時間お説教されることもあったが,今はそんなことはない。自分たちが1年生のときだけきびしかったのかもしれない *3。
1〜3年生は年に2回,3月と9月に部屋替えがあり,好きな友人といっしょの部屋になることができる。入学したときは学校側が決めるが,多分,出身地の近い生徒同士を組み合わせているのではないかと思う。友人がいないと大変なことになるように見えるが,実際には,持て余されるような人は自分の学年にはいなかった。1つの学科は40名1クラスだけなので,同じ学科の友人と同室になると,起きてから寝るまでずっと顔を合わせていることになる。お互い,いいところも悪いところもある人間同士なので,長所だけを見ていく心の広さも必要だと思う。なお,2002年度からは隣に女子寮ができる。大きくはないが,セキュリティーがきびしく,全部の窓にセンサーがついている。
久々に会った瞬間は「やせたなー」,話を聞き終わってみると「大人になったなー」という印象です。高校3年生にはあまりインタビューをしたことがないので普通の高校生とは比較できませんが,親元を離れて3年間共同生活を過ごすと,やはり得るものもちがうようです。工業高校の受験を考えている人は,高専も選択肢の一つになるかもしれません。ただし,入学してからの努力が非常に大切ですし,親元を離れて5年間を過ごすことになるので,じっくり相談した方がいいですね。
今回は1999年8月号でご紹介した苫小牧工業高等専門学校の続編です。高専というのは,高校と大学の専門課程2年間をあわせた5年制の学校です。前回苫小牧高専をご紹介してからもう2年半がたちました。このときインタビューに答えてくれた機械工学科の「鑑真」さんも3年生です。3年間過ごした高専の様子を,もう一度聞いてみました。
まったく変わっていない。携帯電話OK,髪型自由,茶髪,ピアスやパーマ全部OK。もっとも,すごい色にすると教授から「すごい色だな」と言われることもあるが,だからといって注意されるわけではない。高学年になると20歳以上の生徒がいるので,学校の図書館には喫煙室がある。もちろん,お酒はだめ。
2.寮の生活はどうですか。
門限は10:30p.m.だが,自習時間が8:30〜10:30と決まっているので,その時間は自分の部屋にいないとだめ。2年生以降になるとけっこう遊びに出かけている人がいる。寮は校舎の隣にあり,歩いて1〜2分で学校に着く。校舎内でも,寮内でも私服でOK。制服自体がない。1〜3年生が2人部屋か3人部屋,4年生以上は1人部屋。1日に3食,全員が食堂に集まって食事をとる。補食室というのがあり,ガスコンロ・湯沸かし器・電子レンジをおいてあるので,夜食を自分で作って食べられる。消灯は11:30。蛍光灯のブレーカーが切られるが,コンセントに電気スタンドをつないで起きていることもできる。1年生は素直に寝ているが,2年生以上はかなり起きている。テレビは持ち込み禁止なので,パソコンで遊んでいることが多い *2。洗濯は自分で行う。各階に洗濯機・乾燥機がある。
3.部活はどうですか。
野球は1〜3年生が甲子園を目指している。他のスポーツは1年から5年までが一つの部で,高専の大会(全道,全国)を目指している。自分はロボットテクノロジー部。NHKのロボットコンテストに参加するのが目標の部で,昨年の秋の大会では残念ながら北海道予選の2回戦で敗退。この予選は高専のある都市で行われることになっており,昨年の予選は札幌で行われた。5月ごろNHKから分厚いルールブックが送られてくるが,まず,このルールを理解するのが大変。特に禁止事項が複雑で,ロボットが完成したら実はルール違反だったことに気づいた高専もあるらしい。また,毎回ルールが変わるので,作るNHKも大変だと思う *4。このコンクールは3名が出場するが,高専で全部バラして現地で1日かけて組み立て,リハーサルを行うので,実際にはもっと多くの高専生が参加している。
4.どんな授業がありますか。
授業は月曜日から金曜日まで,1年生がほぼ毎日7時限で2年生以降は7〜8時限 *5。土曜日は休み。1時限は45分で,2時限連続も多い。1年生は1日2時間ぐらいが専門教科で,ほかは英語,数学など普通の高校と同じ。3年生以降は英語・数学・ドイツ語と専門教科がほとんど。ドイツ語は3年生のとき必修で,4年生以降は選択教科になる。専門教科の成績が悪いと留年することもある。英語はきびしくないが,しっかり勉強しておかないと社会に出てから困ることになる。高専卒業のときは大学卒よりも2歳若く,企業に入ると世界のどこに行くことになるかわからないので,英語は絶対に必要 *6。専門教科というのは工業力学とか材料力学,製図など。材料工学では,たとえば「金属の棒に上から力をかけると,どのくらい膨張するか」などの問題を解く。ただの棒ならやさしいが,変形した固体だとかなり難しい。選択教科(芸術教科)は普通の高校のように,美術・音楽・書道がある。ただし1年生だけで,2年生以降はない。
5.クラスの雰囲気はどうですか。
クラスのみんなは明るくて楽しいが,居心地が良すぎてぬるまゆにひたっているような気もする。女子は,機械工学では40名中2名,物質工学は40名中約20名と,学科によって大きく異なる。なお,1学科40名がクラス替え無しで5年間過ごすので,クラス全体が勉強に取り組む姿勢があるか無いかで大学進学率が大きく変わるらしい。自分のクラスは,勉強派とエンジョイ派の2つに大きく分かれているようだ。
6.勉強はきびしいですか。
まず,中学とちがうのは,成績が絶対評価だということ。テストがやさしくても難しくても80点以上が優,79〜60点が良,59点〜50点が可,49点〜30点が不可という評定がつく。30点未満が赤不可という評定になる。不可と赤不可は再試がある。赤不可があると留年になる。寮生は自習時間が2時間あるので,この時間に一生懸命やっていれば大丈夫だが,数学はけっこうきつい。先生によって問題の難易度に差がある。絶対評価なので,難しい問題を出す先生の授業の場合は,半分ぐらいが不可になり再試を受けることがある。機械工学科は授業にちゃんと出てテスト前にしっかり勉強すると大丈夫だが,それでも落ちてくる人や消えていく人 *7 がいる。情報工学科と電気工学科はかなりきびしく,けっこう留年者がいるようだ。就職率が100%なので,卒業できればよいと思って油断すると勉強しなくなったり,授業に出席しなくなったりする。学校からは勉強面での強制などは一切ない。「勉強した方がいいぞ〜」と言われるぐらい。先生たちもけっこうのんびりしている *8。いろいろな資格試験も,掲示は出るが強制的に受験させられることはない。ただ,実用英検で1級か2級(?)以上とると英語の授業を一部受けなくてもよくなる。また,英語が得意だと留学生の通訳のアルバイトができる。留学生は,1学年で3〜4名いる。
7.卒業後の進路はどんな状況ですか。
大半が就職するが,年度によって大学進学者数が大きく変わるようだ。機械工学科では,平成10・11年度卒業生で進学者は7名前後だったが,平成12年度は18名いた。就職率は100%。機械工学の場合,一番多いときで40名に対し400件の求人がきたこともあるらしいが,やはり最近は減っている。また,在学中にしっかり勉強した人でないと,誰でも知っているような大企業への就職は難しいようだ。
8.休日はどのくらいありますか。
夏休みが1ヶ月半,冬休みは2〜3週間,春休みは1ヶ月ぐらいで,土曜・日曜・祝祭日の休みをあわせると,半年休んでいることになる。学生食堂にキャッシュディスペンサーがあり,寮生はそこで仕送りのお金をおろしている。なお,校舎は郊外にあり,商店街までは自転車で15分ぐらいかかるので休みの日はすることがない。
9.最後に,3年間過ごした感想をどうぞ。
前回お話ししたとおり,機械関係の勉強がしたくて選んだが,それができるし学校やクラスの雰囲気がいいのでまったく後悔していない。ただ,やはり入学してからが重要。学習面での努力が進学・就職で自分の人生を決めるので,就職率が100%だからというだけの理由で安易に選ぶと後悔すると思う。
*1 服装やバイク・車の免許などのお話を聞くと,学生の自主性を重んじているのがよくわかりますね。
*2 パソコンで遊ぶあたりが,さすが工業高専生という感じですね。でも,今はテレビを見ることのできるパソコンもけっこうあるのでは…。
*3 きびしかった分,今になって身についていることも多いかもしれませんね。
*4 テレビで時々見ますが,すぐにはルールがわかりませんでした。それでも最後まで見てしまうのは,このコンテストにかける高専生の情熱と創意工夫が伝わってくるからだと思います。
*5 「時限」は「〜時間目」と同じです。8時限の日は5時ごろ授業が終わるそうです。
*6 若くて体力もあるので,どこでも大丈夫だろうと期待されるからでしょうね。
*7 留年してもう一度同じ学年で勉強する人と,退学する人のことだそうです。
*8 自分の強い意志が大切ですね。