上級編 家庭でも出来る経絡治療

上級編といいましても技術的に難しいことは全くありません。だれでもできます。

 1.基本治療が良く効かない時、その原因は何処にあるのか、どのように対処すべきか

を考えながら、

 2.即応用が効いて

 3.より効果的な治療法 をご紹介します。

以下の治療法の意義がご理解いただける方は、経絡に関してかなりの理解と経験をお持ちであると推測致します)


f. 実の経絡の治療2 背中の治療を追加 

 実の経絡の治療をより有効にする手技をご紹介します。

 実の経絡の治療1で解説した方法(原穴の治療)で良い効果が認められないときは、異常が見つかった経絡に相当する膀胱経の兪穴(虚の経絡のところを参照)に対する治療を追加します。たとえば、脾経の原穴である、太白(たいはく)に著しい圧痛が認められる場合、背部兪穴の脾兪付近にも圧痛が認められる可能性が高いのです。

 左図には、実になりやすい経絡の兪穴のおおよその位置を示しています。(AMIを用いた研究では、脾経、肺経、肝経、が実になりやすいことが解っています。)この部分に手を触れて触診してみましょう。筋肉が堅く、緊張している場合が多いと思います。ゴムのように堅く、ごりごりした感じの圧痛が強い場合が多いようです。

 背中に手をかざし、意識を手に集中して、身体の状態を感じてみましょう。実の部位は他の部分と比べ、より熱い感じ、強い感じを受けるのではないでしょうか?詰まっているような感じを受ける場合もあります。このような場合はその部分に対する局所治療が有効です。

 この部位を知る便利な方法 最近流行のマッサージチェアに座り、揉み玉に押されるとごりごり痛い部分が何処かを確かめるのも手っ取り早い方法です。


 実の経絡の治療 マッサージから始める

背部の筋肉がゴムのように強く緊張している場合には、この筋緊張をゆるめることが重要です。姿勢不良などが原因で起こり慢性化したものが多いので、その筋緊張をゆるめるためには、程度時間をかけ治療にあるる必要があります。

 この箇所(実の背部兪穴)には自覚症状が無い場合が多く、マッサージを受けて始めて筋肉が堅くなっていることを知る(自発痛は無いが押されるとごりごりと痛みが強い)ことも多いようです。 

 まずはうつ伏せまたは横向きに寝て、緊張した筋肉をゆるめる姿勢を取ります。次に緊張した背部全体を電気毛布などですこし暖めます。暖まったところで緊張の強い部分の辺縁を手でさすって、周辺部から徐々に中心に向かって緊張を解除していきます。(2さするを参照)

 この作業はかなりの根気がいります。特に最初は30分から1時間ぐらい、じっくりと時間をかけてマッサージを行う必要があります。

 頑固な凝りの場合は、マッサージチェアなどで事前にある程度治療してから手揉みすると良いでしょう。

 実の経絡の治療 円皮針を使う

円皮鍼(針)という小さな針が市販されています。3-4mm程の非常に小さな針で、裏にシールが付いており、シールで皮膚にペタリと張り付けて、丁度磁気バンの様に簡単に使うことが出来ます。

 円皮針は小さいとはいえ、プロも使用する針なので、使い方次第で有効に活用することが出来ます。(円皮針は耳針でよく使う小さな針です)

 円皮針は安全性が高いことが大きな特徴です。皮膚に針が刺さるといっても、針先はわずか1-2mm程度の深さにしか達しませんので、皮膚の感染の可能性は低く、消毒済の市販品の円皮針を台紙からはがし、アルコール綿で消毒した皮膚上に張り付けるだけで使えます。(張り付けたまま2−3日間経過しても問題ありません。しかし1週間以上貼りっぱなしにするのは止めましょう)

 この円皮針を実の経絡の原穴、あるいは実の経絡上の圧痛の強い部位に張り付けるだけで、速やかな針の効果(寫、過剰なエネルギーを除く)を得ることが出来ます。多くの場合、張り付けてから針を粘着シールの上から抑えるだけで針の効果が実感できます。

 針がチクリと刺さった後、やや鈍い痛みがずーんと走るとともに、なんとなく詰まっていた感じが徐々に解放され、軽くなっていく様子が感じ取れます。敏感な人は、凝っていた筋肉の緊張がほぐれてきたり、お腹が暖かくなったり、のぼせがとれて手足が暖かくなるなどの変化を感じとることが出来ます。

 しかし、経穴(圧痛部位)が深い層にある場合は、貼るだけでは充分な効果が得られないことがあります。この場合は、粘着シートの上から、円皮針を指で軽く圧迫したり、軽くマッサージすることによって深部に強い刺激を与えることが出来ます。(揉んでも安全性に問題はありませんが、痛みが強い場合は決して無理をしないで下さい。通常は貼っておくだけでも充分な効果が得られます。)


g. 虚の経絡の治療2 腹部を暖める

虚の経絡の治療効果をさらに高めるには、腹部に分布する、募穴(ぼけつ)への温灸が有効です。左図の様に、腹部、両脇に重要な募穴が分布しています。

 この募穴は、背部の兪穴と対応関係がある重要な経穴であり、虚の経絡の治療の際に、両者を同時に灸することによって強い補の効果を挙げることが出来ます。

 募穴は虚の経絡の診断にもきわめて有用です。

腹部を指で丁寧に触診しながら、

1.皮膚温が低く、冷たい感じを受けるところ

2.押すと軟弱で、抵抗感無く指がおなかの中の方に入ってしまう。

3.指が抵抗感を感じると共に、患者が鈍い痛みを感ずる。

など場合はその部分が虚していることを示しています。

 人は全身が弱ってきたり、疲労困憊状態に陥ると自然に猫背になってお腹を抱え込む姿勢をとるようになります。これらは腹部募穴の機能障害を意味すると考えられます。こうしたときには腹部の灸や温湿布、使い捨てカイロの貼布等を用い、腹部のエネルギーを補うことがきわめて効果的です。治療に伴い、緊張していた腹直筋や腹斜筋が伸びてくるのが解るはずです。

 特に膀胱・小腸・三焦の募穴が集中している下腹部正中は、疲労困憊時、高齢者必須の灸治療部位です。

Figure from "five elements" idouno-nihon


h. 中枢と末梢の間の流れを改善する。

 経絡図に記されているように、経絡の大きな特徴として、中枢(身体の中心)から末梢(頭や手足の先)末梢から中枢への流れ、気の体循環があります。

 この実体や生理的な意義は医学の進歩した現代でも不明ですが、少なくとも経験的に気の流れが悪化すれば体調が悪化し、気の流れが改善すれば体調が良くなることが知られています。例えば寒冷に薄着で身をさらすと、首や手足の体温が失われ、筋肉の緊張が増強して末梢の気の流れが悪化しますが、それに伴って頭痛が増強したり、風邪に罹患し易くなります。逆に入浴や適度の加温は気の流れを改善し疼痛を軽減したり疲労回復を促進します。

中枢(躯幹:胸と腹)と、四肢末梢との間の流れが滞る部分は関節の周囲です。

 上肢では肩関節、肘関節、手関節、手指関節

 下肢では股関節、膝関節、足関節、足指関節です。

風邪を引いたり体調が悪いときには節々(ふしぶし)が痛くなりますが、これは単に運動不足等によるものではなく、気の流れの停滞によっても生じているのです。

 特に大関節の前後の、腱、筋、筋膜、血管、神経が集中する箇所の結合組織中は流れの停滞が起こりやすく、臨床上重要な経穴が集中しています。

 関節周囲の流れを改善するには、

関節及びその周囲組織に対し、加温・マッサージ・関節運動(自動運動及びマニピュレーション)・鍼・灸による治療を状況に応じて組み合わせて行う必要があります。

 一般的に、手関節、手指関節、足関節、足指関節等は、加温と軽いマッサージで改善しますが、

肩関節、肘関節、股関節、膝関節などの大関節には、本格的な処置が必要となります。


大関節の処置

処置の前に

 1.関節周囲の痛みのある部位、痛みが度々生ずる部位

 2.関節周囲の、圧痛部位

 3.関節の腫脹や、熱感のある部位、また逆に冷えている部位

 4.関節周囲の筋肉の凝り、筋萎縮の有無

を確認します。次に確認した痛みのポイントが、

 A.関節の靱帯や筋肉、支持組織など、解剖学的構造と対応している、整形外科的疾患なのか、

 B.経絡の走行、経穴と一致している、東洋医学的疾患なのか 

を確認します。

 A.の場合、障害部位の免荷、消炎鎮痛剤の投与、ブロック注射、各種消炎処置、さらに関節や靱帯に対する整形外科的処置が必要となる場合もあります。整形外科専門医による検査を受けられることをお勧め致します。

 B.の場合は東洋医学的に、経絡を構成する「経筋」と呼ばれる、筋々膜によって構成されている経絡機能の障害が関与している場合が多いため、東洋医学的治療や各種理学療法の良い適用となります。


経筋病の治療 (明らかなトリガーポイントの無い場合)

経筋病の場合、経絡の走行に沿って筋肉の緊張が連続して現れるのが大きな特徴です。まず、関節を動かして、

1 どの筋肉を伸ばす(または短縮する)と痛みが生ずるか

を確認し、次に丹念に筋肉を触診して

2 圧痛や硬結はどの筋肉にあるのか

を調べます。例えば下肢では胃経、脾経、肝経や胆経は経筋病を起こしやすく、また上肢では肺経、大腸経、心経や三焦経に起こりやすいようです。(AMIで測定すれば事前におおよその診断が可能です。)

異常経絡が判明したら、さっそく治療を始めます。

1 まず、AMIを用いて通常の最実、最虚の経絡に対する経絡治療を施します。多くの場合、経筋病を起こしていると判断された経絡に対する治療になるはずです。

次に経筋病と診断された経絡上の筋肉を触診して、最も強い圧痛のあるところ、(あるいは最も詰まっていると感覚的に捉えられる処)に対して、針を打ちます。比較的表層の筋筋膜に異常がある場合は円皮針を打って、その上から揉むと有効ですが、より深い処に異常がある場合は、豪針の深刺が必要になります。

(場所が良く解らない場合は、その経絡上の原穴あるいは関節周囲の要穴のいずれか一穴を選びます)

2 豪針をしばらく留置するか(約10分間程度)、あるいは円皮針を時々揉みながら、筋肉の反応を時々確かめます。的確に針が刺入されていれば、次第に筋緊張が緩んでくるのが分かるはずです。

3 針による経絡反応が確かめられたところで、針を抜去し、関節のマニュピュレーションあるいは硬結のマッサージを行います。(円皮針はそのまま留置して手技を行ってもよい)

4 動きが楽になったところで、患者自身に、問題となる経筋をストレッチする運動を行うよう指導します。

続く


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