私が松本隆に初めて出会ったのは大瀧詠一の 「ロング・バケイション」である。 ロンバケのサウンドも鮮烈な印象を持ったものだが,私にとっては歌詞の方がサウンド と同じくらいに興味が沸いた。
「我が心のピンボール」の2番の
「柔らかな背中の冷たい 拒絶」
こんな歌詞がその頃の歌謡曲にはまるでなかったのだ。
「細い影は人文字 海の背中に伸びている」
「防波堤の縁取りに流れてきた心は終着の駅に似てふと言葉さえなくした」
そのどれもが16歳の私とっては刺激的な言葉であった。テープを何度も 聞いて歌詞を書き留めていったものである。 そしてロンバケ以外に数多くの作詞を手がけていることを知るのに そう多くは時間がかからなかった。テレビをつければ そこでは、松田聖子が、近藤 真彦が、寺尾聰が、皆松本の歌を歌っていた。 その時代から遡って、アグネスチャン、太田裕美、岡田奈々、 木之内みどりを知ることになる。 大学生の頃には金がなくて集められなかったレコードやCDをいまになって集めている 次第である。

最近の歌謡曲の歌詞を見ていると、歌手と等身大の人物が日常の卑近な言葉で心情 を吐露するという歌詞が多い気がする。松本の場合、隠喩を使って風景にその心情を 塗り込めていく。ある種、詩の洗練された形がそこにあると思うのだ。 このページを通してKinKi Kidsしか知らない人たち にも作詞家”松本隆”の魅力を知ってほしいと思う。