すのはらの「春原主義」
読書録というよりエッセンスを(最新巻)
1997.8.8更新
ノンフィクションを中心に、鋭くものごとの本質をつかんだ言葉をストレートに抜き出しました。
第1巻の内容
佐々木正人/アフォーダンス−新しい認知の理論●リチャード・ワーマン/理解の秘密●瀬戸賢一/レトリックの知●ノーバート・ウィーナー/発明●村上陽一郎/文明のなかの科学●松岡正剛/フラジャイル●佐藤信夫/レトリック感覚●マーチン・ガードナー/自然界における左と右●小林康夫、船曳建夫[編]/知の論理●シェル・シルヴァスタイン/ビッグ・オーとの出会い
●田中信生/そのままのあなたが素晴らしい
(記1997.8.8)
- 愛された人は、自分を愛することができる。自分を愛せる人は、他者を愛することができる。・・・自分をゆるし、受け入れている人ほど、他者を深く愛することができる。
- 否定的なことばを聞かされて育った子どもは否定的になる。前向きで肯定的なことばに触れて育った子どもは、前向き肯定的な性格になる。・・・私たちは、他者との関係の中で、とりわけ親との関係の中で生きています。親はそのまた親との関係の中で自分を作り上げてきました。つまり、私たち一人ひとりは、延々とつながった家族の鎖の中にいるのです。・・・(しかし、)だれを責めても仕方がない。・・・そのことに気づいた人が、親を許して、悪循環を断ち切るしかない。・・・心病む人は、その鎖を断ち切るためにあえて選ばれた人なのです。
- 私たちは、・・・自分の醜さに気づいて取り乱したくないために、妙に強く出たり、明るくふるまったり、知識をひけらかしたりと、安定性に欠けた行為をしています。自分の中に美しいお岩さんも醜いお岩さんも同居していると気づき、受け入れることが大切です。肯定も否定もしないで、まずはそっくり受け入れることです。・・・「これがいまの自分だ」ということをいったん受容して、そのうえで、「私には何ができるだろうか」と目を外に向けることができたら素晴らしいと思います。
- 自分の性格を他人に聞くのは勇気がいることです。少々つらいことを言われることもあるかもしれません。しかし、そのような指摘を素直に聞ける人、ありがたいと思える人は、人格をゆたかにしていくことができます。
- あなたがイラつく相手・・・それは、あなたが受け入れていないあなた自身の性格を、その相手の中に見るからなのです。
- 家が貧しくて学校に払う月謝もない、と子どもが泣いていたら、肝っ玉かあさんが豪快に言った。「心配するな。おまえ一人が払わなくたって、学校はつぶれないから」
ダイヤモンド社、1995年、¥1,300
●松岡正剛・金子郁容・吉村伸/インターネットストラテジー −遊牧する経済圏−
(記1997.8.6)
- インターネット(で)は、多様な広い範囲の人の間でオープンなやりとりを繰り返すうちに自己編集的な動きが出現する。
- (ネットワークの中の)柔らかさというのは、既存の価値体系から見れば、「遊び」と「好み」に見えちゃう。しかし、その中に何かが潜んでいるんです。
- 情報を隠すことではなくて、まず自分が出すことによって仲間と情報を共有する。そうすることで全体を引き上げ、結果として自分にもメリットがくるようなシステムを作り出す・・・インターネットでは、個人個人は初めからつながりたいという意図を持ち、他人の状況が良くならなければ、自分も良くならないという関係性が前提です。
- 「情報は生きている」のだから、閉じた世界からはなにも生まれない・・・「情報は編集されることを待っている」「情報は対象性を破る方向に進む」「情報は乗り物と着物と持ち物を替えている」「情報は相互保存される」「情報はつねにネットワークされる」
- ボランティアは、自分から関わることを選んだために、自らを「危うい」立場、攻撃を受けやすい立場に立たせます。・・・このこと・・・バルネラビリティー(vulnerability)は弱さのようでいて、実はつながりをつける「弱さの強さ」、力の源なのです。・・・ネットワーカーは、まず第一にボランティア的存在でなければならない・・・知っているということは知らない人がいて初めて活きる。それがネットワーク・コミュニティー成立の一番の基本であり、ボランタリズムの基本でもある
- 自分の中の相対的に微弱な部分やフラジャイルな部分を持ち出すと、世界のひだひだの入りやすいところから世界ネットの接点を持ちうるということが起こる・・・世界というものは弱くつながっているというふうに思えることによって、自分の中のフラジャイルなものに気づき、それが出しやすくなる。・・・相手に依存してしか存在しないということを、初めから自分の存在の基盤にするということ・・・が・・・フラジャイルだ。
- ネットワークというのは、そもそも同じものをつないでもネットワークは成立しない・・・違うものをつなぐから、(情報は)高いところから低いところへ流れる。・・・多様性の中に入った「関係づけ」が経済を作る
ダイヤモンド社、1995年、¥2,800
●堺屋太一/組織の盛衰
(記1997.8.6)
- 失敗の責任者はいつもただ一人だが、成功の功労者は限りなく多い。
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現実的とは「目的を達成しやすい」(目的達成性)ことであって、「着手しやすい」(着手容易性)ではない。
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組織を作る目的と作られた組織が持つ目的とは必ずしも同じではない。
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創造力というものは、必ず少数者から出されて、従来の多数派に変革を求める性格がある。・・・創造力とは空想や思い付きではない。創造力の裏付けには的確な現状把握と将来予測がなければならない。
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会議の席では、積極的推進派よりも問題点疑問点を並べる消極的批判派の方が頭脳明晰に見える・・・既成の大組織が環境変化に対応できないのはこのためである。
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才ある者は徳がない、徳ある者は才がない・・・どこの組織でも才能のある者は少数だから、才能実績だけで人事評価を行えば、多数の凡人からの反発を招く・・・これに対して・・・徳川幕藩体制では、能力のある者には権限を与え、実績のある者には高禄(高収入)を保障し、人徳のある者には高い地位を就ける仕掛けにしている。・・・安定社会を目指した徳川幕府は、権と禄と位とを分離することによって、優越感と不満との均衡を保とうとしたのである。
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理想を知ることこそが理想を実現する第一歩である。
PHP研究所、1993年、¥1,500
●ダニエル・ゴールマン/EQ〜こころの知能指数
(記1997.4.1)
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私たちは誰ひとりとして、感情の噴出や後悔がもたらす大波と無関係に生きることはできない。・・・感情が人間を支配しているときには理性など手も足も出ない・・・理性的な判断を下すために感情は不可欠な要素である。
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人間の能力の差は、自制、熱意、忍耐、意欲などを含めたこころの知能指数(EQ)による・・・EQは、教育可能だ。
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私たちはまず感情をかしこく操縦する法を知らなくてはならない。・・・目標は感情を抑えつけることではなく、バランスをとることだ。
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子供の発達のために教育がなしうる唯一最大の貢献は、その子が自分の才能に最もふさわしい方面に進んで能力を発揮し満足して生きられるよう応援してあげること
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人生で賢明な決断を下すためには、自分の心の声に耳を傾けることが大切なのだ。
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悲しみは・・・多忙な日常生活から人間を強制的に引き離し、喪失をいたみ、その意味を考え、最終的には将来に向けて心理的に適応し新しい計画を立てる時間を与えてくれる。
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希望とは単に「なにもかもうまくいくだろう」という楽天的予想とは異なる。・・・希望とは「目標が何であろうと、目標達成に必要な意志と手段とが自分に備わっていると信じること」である
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共感は情動の自己認識のうえに成り立つ・・・自分の情動に心を開ける人ほど、他人の気持ちも理解できる。
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心を開いたコミュニケーションには皮肉や脅しや軽蔑の言葉がないのだ。言いわけ、責任のがれ、非難による反撃など自己弁護の言葉もない。
講談社、1996年、¥2,000
●オリバー・サックス/妻を帽子とまちがえた男
(記1996.8.2)
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病気とは、けっして損失とか過剰だけではない。病気におかされている生命体は−つまり個人の側は−つねに反発し、立ち直ろう、元どおりになろう、アイデンティティーを守ろう、あるいは失われたアイデンティティーをとり返そうとして、・・・必ず反応する。・・・患者はその人なりに、病気とたたかい、人間としてのアイデンティティーを取り戻そうと努力している。
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医者は自然科学者とはちがう。医者が問題にするのは、一個の生命体、すなわち、逆境のなかで自己のアイデンティティーを守り抜こうとする個人としての人間である。
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テレビでは、例の魅力的な元俳優の大統領が、たくみな言いまわしと芝居がかった調子で、思い入れたっぷりに演説していた。・・・大統領はいつものように感動的に話していた。(しかし、失語症病棟の)患者たちといえば、みな、大笑いしていた。・・・失語症患者は言葉を理解できない。しかし、彼らは言葉のもつ表情をつかむのである。総合的な表情、言葉におのずからそなわる表情を感じとるのだ。言葉だけならば見せかけやごまかしがきくが、表情となると簡単にそうはいかない。その表情を彼らは感じとるのである。・・・巧妙な言葉づかいにも調子にもだまされなかったのは、脳に障害をもった人たちだけだったのである。
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世界とはどういうものなのかを子供たちに教えるのは、「物語的な」あるいは「象徴的な」力なのである。象徴とか物語をとおして具体的な現実が表現されるからである。
晶文社、1992年、¥2,900
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