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T 手軽にうまい水を造りたい

 ばい菌も通さないというアメリカ製浄水器を業者が持ってきた。逆浸透法という最新技術を応用したものだそうだ。取扱説明書は複雑で難しい。ホースを蛇口につなぎ、コックをひねると接続部から水が漏れる。ビスを幾度も締め直してやっと設置できた。バルブを調節して15分ほど逆洗した後、ようやく給水を開始して待つこと1時間。せっかくたまった最初の水は捨てるのだという。また給水をやり直し、結局、飲める水ができたのは更に1時間後であった。

〈機械が好きで、気の長い人でないと無理だな〉

 できた水の味をみる。空虚な味だ。何かもの足りない。そんな苦労をしてまで飲みたくなるほどうまい水ではない。硬水しか飲めない国なら別だが、とにかく面倒すぎる。軟水の日本ならもっと簡単な装置でいいはずである。
 やっかいな接続式はやめにして、手軽な卓上型を捜すことにした。いろいろあるが、商品としての価値を何に求めるかで各メーカーの性格が出てくる。初めに最も簡単な活性炭ろ過だけの製品を何台かテストした。どれもカルキ臭は取れるが、味はいまひとつシャープさに欠ける。

 次に、銀をまぶした活性炭で水が腐らないといううたい文句のポットを求めてきた。これは飲んでしばらくすると、舌の奥がじわーっと渋くなる。これでは逆効果どころか溶け出した銀が害にならないか心配である。

POT  あちこち捜し回ってもこれはという浄水器にお目にかかれず、諦めかけていたころ、ある店で見なれない形をしたポットを見つけた。活水器*と書かれているが、手に取るとまさしく卓上型浄水器である。活性炭の容器が大きいうえ、この種の商品にしては意外と丁寧な作りをしている。約1万円と少々値は張るが、説明書には大理石でまろやかになると書いてある。

〈これはいけるかもしれない〉

すぐ包んでもらい、帰路を急いだ。期待に応えてくれるか気にかかる。

 水道水を注いだ。塩素の除去率は比較的いい。カルシウムイオンが増えるせいか原水よりも味がよい。今までテストした同種の製品との違いがはっきり分かる。他の人にも試してもらうと、一様においしいと言う。100台ほど取り寄せたら何人もの女性社員が分けてほしいと申し出た。不思議に思って一人に尋ねたら、ご主人にプレゼントしたいのだという。水道水のカルキ臭を嫌がるのだそうだ。


*商品名:ファミリーポット

(C) 1991 k-tsuji

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