DOWN
Z ミネラルウォーター

 今はどこのスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも飲料水を売っている。2g詰めのプラスチックボトル入りが200円前後の値段で、ずらりと並んでいる。けっこう売れているようだ。

 ナチュラルミネラルウォーターとしていろんなブランドが出回っている中で、わりあいよく目にする数種類を買い求めた。国産5種類が「六甲のおいしい水」、「南アルプスの天然水」、「富士ミネラルウォーター」、「摩周の霧水」、「龍泉洞地底湖の水」、フランス産2種類が「ボルヴィック」、「ヴィッテル」とある。どっしりと重い。ふうふう言いながら持ち帰った。

 冷蔵庫で一晩冷やしてから飲み比べた。国産品のうち最初の4種類は、どれも水道水より十分においしい軟水である。富士ミネラルウォーターは口当たりが軽く、摩周の霧水は“きれ”がいいがやや渋いというように、一つひとつ吟味すればそれぞれ少しづつ差があるが、活水器を通した浄水との違いはそれほど感じられない。ただ、龍泉洞地底湖の水だけは硬水に近いのか、かなり渋みが強く、国産品の中では異色の存在と言える。

volvic  フランスのボルヴィックも最初に挙げた国産品とそれほど変わらない味である。輸入品のせいか、若干“きれ”がいいような気もするが、さほど特色があるとは思えず、グラスをテーブルに置いた。そうしたら気がついた。なにか、じわーっと渋みが出てくる。ラベルにはミネラルが少ない軟水と表示されているにもかかわらず、なぜ飲み終わってからこれほど渋くなるのか、不思議な水である。

 最後のヴィッテルは非常に個性が強い。渋くて、舌がごわごわになる。成分表によればカルシウムと硫酸塩が極端に多く含まれている。硬水なのだ。試しに塩化バリウム溶液をたらしてみたところ、硫酸バリウムの沈殿がたくさんできた。確かに硫酸イオンが含まれている。それも半端な量ではない。また、せっけん水を加えても全く泡立たない。せっけんの成分がすべて沈殿してしまうからである。

 こんなに渋い水はそのままではとても飲む気になれない。ところがなぜか、今回飲み比べた中では渋みの強い水ほどウイスキーと相性がいい。水割りに使うと味に深みが出る。今のところそれ以外の用途は思い浮かばない。強いて言えば、カルシウム、マグネシウム摂取用の保健飲料である。

 渋みの少ないミネラルウォーターは成分のバランスに多少の違いはあっても、基本的に軟水でどれもおいしい。渋みの強い種類は人により好みもあるが、単純においしいとは言いがたい。1リットル当たりの価格は、水道水が1円以下、活水器は約10円、ミネラルウォーターが100円くらいである。

 たまにおいしい水を飲みたくなる人であれば、ミネラルウォーターがいい。しかし、毎日飲むなら活水器が断然割安で、味も国産のミネラルウォーターと区別できないほどおいしい水ができる。活水器の長所はほかにもある。重い水を持ち帰る必要がないこと、空容器を捨てる手間が要らないことである。カートリッジの寿命が尽きるまではプラスチックごみが出ないから、環境にやさしい点も優れている。


(C) 1991 k-tsuji
UP
目次へ戻る