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[ 熱湯消毒

 あるとき、浄水器の営業マンから話を聞く機会があり、いろいろ質問した。

「御社の活水器はおいしい飲料水を造ること以外に、どのような用途がありますか」
「そうですね。お茶やコーヒーはもちろんですが、製氷用にもいいと思います。水道水をそのまま冷やして凍らせますと残留塩素が氷の中に閉じ込められてしまいます。氷が解けるときにそれが出てきますからおいしくないのです。それから最近は、お湯が要らず水で入れる麦茶のパックなどがありますが、ああいう飲み物にもいいと思います」

「おかしな思いつきかもしれませんが金魚の飼育にはどうでしょうか。塩素が取れるからいいのではないかと思いますが」
「家庭用なら差し支えありません。ただ、活性炭の寿命が切れたときに知らずに使って金魚が死んだということがありまして、それを承知のうえで、あるいは塩素がないことを確認して使うのでしたらもちろんけっこうです。ただし、営業用の養殖には避けていただきたいのです。」

「ほかに何か変わった使いみちはあるんでしょうか」
「ええ。ご飯を炊くときにこの水で米をとぐとおいしいという話です。私は実際にやってみたわけではありませんから断定はできませんが、塩素によるビタミンの破壊が少なくなるのは確かですから、意外とほんとうかもしれません」

「ところで、パンフレットには毎日10リットルの浄水を採取したとして、活性炭の寿命が1年間もつと書いてありますが、実際にこれほど長期間使えるものですか」
「大容量のカートリッジですから普通の使い方でしたら十分もちますが、水道水に残留している塩素濃度が異常に高いとか、水洗の回数が極端に多いような場合にはカタログどおりの性能が出ないこともあります」

POT  この活水器はわたしがテストした中で最もおいしい水ができた。しかし、欠点というか、懸念される問題が一つあった。それは熱湯消毒できないことだった。活性炭そのものは熱に非常に強いのだが、カートリッジ内部に使用されている支持体がポリエチレンのため、熱湯には耐えられないというのだ。そこで、不満をぶつけてみた。

「他のメーカーの浄水器では、幾日かに一度はお湯で消毒してくださいという機種がほとんどです。ところが、御社の活水器は材質の関係から熱湯消毒できないという。そこのところはどのように考えていますか」

 彼は一呼吸おいてから、こう答えた。
「活性炭にばい菌がついていても、水を通せば洗い流されてしまいます。また、活性炭の内部へ入り込んでいて流れ出ない場合には、浄水を造るときにも出てきませんからだいじょうぶです。使用する前に、あらかじめコップ2〜3杯の水を通して捨ててもらえば全く心配ありません」

〈うーむ〉

 学術的なデータに裏付けられた話かどうかはわからないが、すじの通った説明である。熱湯消毒できないよりは、できるほうがいいに違いないが、手間がかからずにうまい水ができることが肝心だ。ただ単に塩素臭を除去したいとか、生きたばい菌のいない安全な水を飲みたいということなら浄水器は必要ない。沸騰させるだけで目的は達せられる。


(C) 1992 k-tsuji
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