内閣総理大臣 小泉 純一郎 様
外務大臣 川口 順子 様
米国は国益のためにイラクを攻撃する計画を推進しています。日本政府はそれを阻止する努力をせず、攻撃準備に荷担しています。なぜなのでしょうか。
アメリカのブッシュ政権によるイラクに対する武力攻撃の計画は、国際法上のいかなる根拠も示していません。日本がこの計画を支援することは、国際法秩序および武力による国際紛争の解決を禁止する日本国憲法を無視するものです。また、開戦に反対し査察の継続と平和的解決を求める日本および世界の圧倒的な世論に対する説明責任を果たしていません。
イラクの人々は、フセイン政権の弾圧に加え、湾岸戦争による被害、その後12年間の経済制裁によってすでに多大な苦難を強いられています。特に女性は栄養失調や病気、出産危険率の増加に見舞われる結果となりました。また、社会は保守化し、女性の自由と社会進出は大幅に制限されました。
イラク市民が被っているこれらの苦しみに対し、現フセイン政権だけでなく、国際社会もまた大きな責任を負っています。イラクへの戦争を許すことは、女性や子どもたちを含むイラク市民に対する最も深刻な犯罪を、安全保障の名において容認することになります。
さらに、対イラク武力攻撃の容認は、アラブ地域をいっそう不安定化させ、地域紛争や社会的暴力を拡大させるでしょう。このことは「法に基づいた国際秩序」の価値を貶め、武力による先制攻撃を正当化するような「グローバルな軍事秩序」への道をひらくことです。
また、ブッシュ政権は「世界の保安官」として、気に入らない国家や民族などの集団を「悪の枢軸」と名指しにし、軍事的、経済的、政治的な力で支配することを「新しい国際秩序」として世界に押し付けようとしています。米国がイラクやアフガニスタンを標的にし、米国の傘下でイスラエルがパレスチナを攻撃することは、人々を犠牲にし、恐怖と絶望のなかで子どもたちまでが武器を手にするような状況を生み出しています。
私たちは、日本政府がアメリカの国益に則ったグローバルな軍事戦略に組み込まれ、国際的にイラク攻撃を支援し、国内では有事法制を設立することに断固として反対します。とりわけ日本政府が北朝鮮に「悪」のレッテルを貼り、軍事的緊張を高めることは、東アジア地域の安全保障を損なう結果を招きます。こうした政策はすでに、在日コリアンの人々に対する民族差別を煽り、軍事基地周辺に住む人々の安全を脅かしています。これは、この国に住むすべての人々の自由と安全が脅かされることを意味します。
私たちは「安全」に対して、異なった見方を求めます。人が生きるために必要とする安全とは、暴力からの自由、生活を維持できる環境、衣食住など最低限の資源、教育や医療、人間の尊厳、個人や文化的なアイデンティティーの尊重、人災からの自由などのすべてが保障される状態を言います。軍事に依存する安全保障は、むしろ暴力の連鎖を招き、市民の自由と権利を侵害し、人間の安全と尊厳を損なうことになります。
日本は平和憲法を持つ国として、武力を放棄し、対話と交渉によって平和を創造する責任があります。同盟国であっても米国に追随するだけでなく、新たな暴力に手を染めることを阻止することができるはずです。
私たちは、日本政府に対し次のことを求めます。
1. イラク攻撃案に対して、明確に反対の意思表明を行うこと。
2. 武力による国際紛争の解決を阻止するためにあらゆる外交努力を行うこと。
3. 人間の安全保障の視点から、イラクや北朝鮮の人々も含めた世界の人々が直面す
る軍事的・経済的脅威を取り除くために、非武装手段による平和構築へ積極的に 貢献すること。
2003年2月28日
Women in Black 東京
|