パレスティナ市民に対するイスラエルの武力攻撃と不正な占領に抗議する
WOMEN IN BLACK Tokyo 声明(2002.4.12)
私たちWomen In Black Tokyoおよび賛同団体・個人は、イスラエル軍によるパレスティナ市民の殺傷、不当な逮捕、家屋等の破壊に断固として抗議する。これは「テロリズムとの闘い」などではない。民族差別に基づいた無差別な虐殺であり、明らかに国際的な法基準に違反する行いである。
私たちは、今現在起こっているパレスティナ人とユダヤ人市民に対する殺戮を、「ユダヤ教徒とイスラーム教徒」「ユダヤ民族とアラブ民族」の永遠に続く暴力の応酬とするような見方には、はっきりと反対する。こうした考え方は、紛争の原因を覆い隠し、ユダヤ人とパレスティナ人に対する偏見の表れであり、これまで不正義を見過ごしてきた私たち国際社会の責任から目を背けるものである。そして、この暴力の連鎖には出口がないかのような印象を与え、イスラエルとパレスティナの中に存在する、オルタナティブな解決を探ろうとしている良心的な人々や女性たちを苦しみの中に孤立させることになる。
私たちは、イスラエル首相アリエル・シャロン氏が、昨年の9月11日以降、ブッシュ大統領が発明したレトリックを、パレスティナ市民への無差別攻撃を正当化するために用いていることに注意しなくてはならない。シャロン氏は、「今やわれわれのテロに対する自由の闘いは世界に支持されるようになった」と述べて、アラファト議長をはじめパレスティナ市民全員を―幼児に至るまで―テロリスト陣営と見なすことを正当化した。私たちは今こそ目を見開いて認識すべきだ。「敵と味方」「善と悪」という二項対立を作り出し、テロリズムという暴力に報復や殲滅という暴力で対峙しようとするレトリックに世界中が巻き込まれ、出口のない暴力の泥沼にひきずりこまれようとしている。
1988年、エルサレムの一握りの勇敢な女性たちが街頭に立ち、イスラエル政府のパレスティナ占領政策を支持しないことを宣言した。彼女たちはそれから14年後の今も、激しい野次や罵倒に抗して立ちつづけている。世界の多くの女性たち、そして日本の私たちも、彼女たちの行動から、多くの励ましとインスピレーションを受け取った。私たちは、彼女たちの、そして世界中の暴力に抗議する女性たちの勇気に心から賞賛を送り、彼女たちと連帯して抗議する。
テロリズムは許されない暴力であるが、「正規の軍事行動」であれば何をしても正当な暴力の行使であると言う人々に騙されてはならない。イスラエルのWOMEN
IN BLACKは、オルタナティブな解決策を探そうとする人間の知恵と勇気を示してくれた。暴力を生み出している根源的な不正を終わらせなくてはならない。わずか16歳の少女が自爆テロの道を選ばざるを得ないような状況を、私たちはこれ以上許してはならない。
イスラエル政府に要求する。
今すぐにパレスティナ市民に対する武力攻撃を停止し、国際的な法基準を遵守し、占領地から軍隊を永遠に撤退すること。不正な入植活動をやめ、占領地とイスラエル内のパレスティナ人に対する差別と抑圧を終わらせること。パレスティナの存在を承認し、パレスティナの政治的・経済的自律が確保されるような和平案に合意すること。イスラエルの人々と同等に、パレスティナ市民の安全と自律、人間として生きる権利を尊重すること。
アメリカ政府に訴える。
アメリカ自身が「テロに対する正義の闘い」というレトリックを乱用し、パレスティナ自治政府を批難する一方、イスラエルの侵略・占領を是認してきたことが、介入を遅らせ、イスラエルの作戦拡大と犠牲者を増やす結果を招いている。このような不公平な政策は米国の信頼性を傷つけるものでしかない。「自爆テロ」とは比較にならないほど大規模かつ組織的なイスラエルの犯罪行為をただちに停止させ、国際的な法基準の遵守を求めること。パレスチナ市民の安全と人権が保障されるよう、イスラエルによる武力攻撃と侵略・占領を完全に停止させるために徹底した外交努力を行うこと。国連の指導を尊重し、パレスティナの政治的・経済的自律が確保されるような和平プロセスを実現させること。
日本政府に訴える。
現在日本の国会は、軍事力で問題解決を計る米国に同調する形で、有事立法を通過させようとしている。私たちは、有事法制を成立させることによって、日本が軍事体制を築くことに反対し、米国のように、「防衛」の名のもとにイスラエルなどの軍事攻撃を支持する可能性に、強い懸念を表明する。日本が米国とは異なる自らの立場を明確にし、イスラエルの占領破壊行為を直ちに停止させ、国際的な法基準を遵守するよう、行動を起こすことを要求する。国連平和維持軍をパレスチナに派遣し、パレスティナ市民の安全を確保するよう要請すること。パレスチナの政治的・経済的自律が確保されるような和平が達成されるよう外交努力を行なうこと。
国際連合に要請する。
国際法違反である武力攻撃と占領行為を、ただちに停止させるに必要な手段をただちに実行すること。国連監視団をパレスティナに派遣し、パレスティナ市民の安全を確保すること。国連を代表する特使や組織を派遣し、重大な人権侵害とその影響を監視し、記録すること。パレスティナの政治的・経済的自律が確保されるような和平案を実行させること。パレスティナの民衆、特に女性やマイノリティーが主体となる和平プロセスを実践すること。イスラエルによる広範かつ組織的な犯罪行為の責任者を、国際法に基づいて裁くこと。
最後に、私たちは停戦とパレスティナの自治が達成されれば問題がなくなると信じているわけではない。憎しみと悲しみを癒し、暴力と不正を克服するというより重大な困難に地域の人々は直面せざるを得ない。それゆえ、私たちは、これまで暴力と占領に反対してきたパレスティナ女性、ユダヤ女性たちの声が和平プロセスに反映されることが重要であると信じる。そして両社会において、女性の人権と役割の重要性が認識されることを心から願う。
2002年4月12日
Women In Black Tokyo
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