緊急声明
私たちに残されたチャンスを殺すな
私たちは、日本の市民3人がイラクの武装勢力によって拘束され、残酷な方法で殺害の脅迫を受けていること、そして、日本政府が自衛隊撤退は行わないと即座に宣言したことに、大きな衝撃を受けています。
私たちは、この武装グループの卑劣で非人道的な行為を強く非難すると同時に、小泉政権が自衛隊撤退というもっとも重要な選択肢を少しのためらいもなく否定して彼らの生命への危機を増大させたことに、強い怒りをもって抗議します。
3人の安全確保を最優先して自衛隊を撤退させること、非人道的で不法な占領のためではなく、イラクの人々のための支援を非軍事的な方法で行うことを、政府が即刻明言するよう求めます。
福田官房長官および小泉首相は「日本は人道支援に携わっており、撤退する理由はみつからない」と述べ、自衛隊の撤退は、卑劣な脅迫に屈することでしかないと信じさせようとしています。
しかし私たちは、3人が拘束される前から、イラクにおける自衛隊の活動を停止すべき十分な理由があったと考えます。そして、自衛隊の撤退は、日本が真に人権と民主主義を尊重する社会であり、そのような原則にもとづいてイラクの人々への非軍事的支援が可能であることを内外に示しうる、私たちに残されたほとんど最後の機会であると訴えます。
1.イラクで自衛隊活動を行う条件は最初から存在していなかった。
小泉首相は「自衛隊は非戦闘地域において人道支援に従事するのであり、憲法9条違反にはあたらない」と主張してきました。しかし占領軍に対する攻撃の激化を指摘されると、「どこが危険かなど私にわかるわけがない」と無責任な答弁をくりかえし、自衛隊派遣の前提条件が不明確であることを自ら露呈しました。これを証明するように、
3人の拘束が明らかになる直前には、自衛隊宿地を狙った砲撃がありました。
自衛隊を合法的に派遣する条件は最初から完全に破綻しており、これ以上の憲法違反状態を維持することは、内閣には許されていません。
2.日本は、イラクの人々への人道支援よりも、イラクの人々を抑圧する占領に加担していると客観的に見なされうる。
自衛隊は人道支援を行っており占領軍の一部ではないという小泉政権の主張は、イラクの人々の意思を無視した独善的な見解です。客観的にみれば、イラクにおける戦争は、より激しく全面的な第2段階に入っていることは明らかであり、アメリカ率いる占領軍は非民主的な方法でイラク人を支配し、イラク人に対する殺害・人権侵害を続けています。
さらに最近、アメリカはモスクへの爆撃さえ含むイラク市民に対する無差別攻撃を行い、わずか数日で100人以上の民間人犠牲者を出しました。もはや占領軍が戦っている相手は、一部の「テロリスト」だけではありません。イラクの人々全体を、アメリカは力で抑圧しようとしているのです。
日本は、「大量破壊兵器」を理由としたアメリカによる不法な侵略戦争を支持してイラクと世界の人々の信頼を裏切り、一貫してアメリカへの軍事的非軍事的協力を続けてきました。その結果、日本がイラクの人々に敵対する占領勢力の主要な柱であるという認識は、ブッシュ政権だけでなく、イラクの人々にも広く共有されています。小泉内閣の主観的な説明が通用するのは日本の一部でしかありません。
3.日本政府がいかなる犠牲を払っても「テロとの戦争」を遂行することを正当化する国民の合意は存在していない。
小泉内閣は、こうした政策を強行することによって、日本の市民に対する危険を増大させることを十分に予測できたにも関わらず、その危険を国民に説明することなく、撤退の条件をあいまいにして自衛隊派遣を強行しました。その一方、アメリカ軍によるイラク市民に対する虐殺と人権侵害に対して、いかなる対応もとってきませんでした。
小泉内閣は、3人の生命が脅かされているにもかかわらず、「テロの脅しには屈しない」と政策変更を検討さえしていません。これは、今後も自衛隊員や民間人の生命が危険にさらされても、また、イラクの人々に対するいかなる残虐行為がなされようとも、アメリカとの軍事同盟を優先させるという政策の表明です。
しかし、そのような国民合意は、一度もなされていません。私たちはすべての市民を巻き込む全面戦争に突入する白紙委任状を、小泉首相に与えた覚えはないのです。
反米武装勢力だけでなく、国民の信任を得ることなくアメリカの不法なイラク侵略・占領に加担してきた日本政府もまた、日本の市民が直接的な生命の危険にさらされている状況に、重大な責任を負っていると私たちは考えます。
その結果、ほんとうにイラク市民とともに平和と安全の回復のために尽くしてきた人々が、このような恐怖と危険にさらされなければならないということに、はげしい悲しみと憤りを感じています。
自衛隊の撤退をもって、日本が不法な占領者の側に立ってイラクの人々を抑圧するのではなく、侵略戦争に加担したことへの真摯な反省に基づいて、イラクの人々自身による平和と民主主義への道を非軍事的な方法で支援していくという宣言としたいと願います。
もし3名に生命の危険が及ぶようなことがあれば、そのときは私たち全員が、生きながら戦争の炎に投げこまれることを意味するのです。
2004.4.10
Women in Black 東京 |