2015.11.23更新
印が主な更新個所です。)

■伝 記

神学的に興味深い人物の伝記、特に惹かれる信仰の偉人、そして、日本人で気になる神学者、伝道者、説教者の生きざま。榎本保郎、辻宣道、アーサー・ホーランドというあたりは、型破りな牧師像へのあこがれかもしれない。

カール・バルトの伝記は、バルトのページを参照。

よく教会の本棚にある教会新報社の『少年少女信仰偉人伝』全60巻(小学生上級以上向けの伝記のシリーズ、1982-1983)もとてもよいので、ときどき読むとリフレッシュできる。

1.マルティン・ルター

Martin Luther, 1483.11.10-1546.2.18

定評あるお勧め

ローランド・ベイントン(青山一浪、岸千年訳)、『我ここに立つ マルティン・ルターの生涯』、聖文舎、1954初版(ルーテル社),1962再版、550頁。
ルター伝の超名著。日本語訳には原著の出版年が書かれていないが、1950年。
小牧治・泉谷周三郎、『ルター』(人と思想9)、清水書院、1970、214頁。
ルターの評伝の中で現在入手できるのはこれだけかも。生涯と思想の紹介。内容もきちんとしている。
フリーデンタール(笠利尚、徳善義和、三浦義和 訳)、『マルティン・ルターの生涯』、新潮社、1973、497頁。
当時の社会の背景や教会の状況にめちゃ詳しい、2段組約500ページのすごい本。おもしろい。

古いもの

その他、分量、内容共に読みやすい伝記としては、岸千年『改革者マルティン・ルター』(聖文舎、1978、182頁)か、小出正吾『マルチン・ルッター』(審美社、1967、192頁)を図書館で。また、少し古いが、ストロール(波木居齋二訳)『ルターの生涯と思想』(新教出版社、1955)も名著らしい。これらのほか、熊野義孝「マルティン・ルター――その生涯と信仰」(『熊野義孝全集第10巻 歴史と現代 上』、新教出版社、1981年、3-181頁)というのもある。これは1947年に鱒書房から出たもの。なお、今井晋『ルター』(人類の知的遺産26、講談社、1982、325頁)は、「T ルターの思想」と「U ルターの生涯と思想形成」をわずか102ページで。「V ルターの著作」で、聖書講義の紹介と抄訳(詩編、ロマ、ガラテヤ)、「キリスト者の自由」(徳善義和訳)、「奴隷意志論」(山内宣訳)、「W ルターと現代」の中の「2.現代神学におけるルター」として「一、カール・ホル」「二、カール・バルト」「三、パウル・ティリッヒ」。

新しいもの

リュシアン・フェーヴル(濱崎史朗訳)、『マルティン・ルター――ひとつの運命』、キリスト新聞社、2001(1988)。
徳善義和、『マルチン・ルター 生涯と信仰』、教文館、2007、336頁、2625円。
FEBCで放送された全12話。福音の再発見から家庭生活、ルターの書いた手紙や賛美歌も多数紹介とのこと。
S. ポールソン(湯川郁子訳)、『はじめてのルター』、教文館、2008、310頁、1995円。

その他

エリクソン『青年ルター』。西平直訳、全2巻、みすず書房、2002,2003。あるいは、『青年ルター――精神分析的・歴史的研究』大沼隆訳、教文館、1974。「ルターのアイデンティティの危機を主題としながら、プロテスタンティズムの成立という西洋精神史の一大転換点の意味を問い直した」(島薗進『宗教学の名著30』ちくま新書744、2008、p.214)。

T.カウフマン(宮谷尚実訳)『ルター――異端から改革者へ』(教文館、2010、188頁、1680円)は、ちょっと異色のルター論という感じで決して入門的ではなく難解な面もある。

2.ジャン・カルヴァン

Jean Calvin, 1509.7.10-1564.5.27

定番のもの

渡辺信夫、『カルヴァン』(人と思想10)、清水書院、1968、195頁。
日本のカルヴァン研究の第一人者による評伝。一般向けだが最初に読むべき必読書だろう。第一部がカルヴァンの生涯(約100頁)。
ヴィルヘルム・ノイザー(池永倫明訳)、『カルヴァン』、一麦出版社、1996(1971)、214頁、2800円。
最も新しく翻訳された評伝。おすすめらしいが、持っていないしまだ見ていない。
森井眞、『ジャン・カルヴァン――ある運命』、教文館、2005、380+17頁、3300円。
著者は、訳書のベノア『ジャン・カルヴァン』のあとがきで「わたくしもいつかは自分なりのカルヴァンを描いてみたいと思っている」と言い、森井真『カルヴァン』(世界思想家全書、牧書店、1964、161頁)を経て、本書でその念願を達成した。

古いもの

古くは、ベザ(ド・ベーズ)(田中剛二、得永新太郎訳)『カルヴィンの生涯』(活水社書店、1950)とか、シュティッケルベルガー(中沢宣夫訳)『ただ神の栄光のために』(新教出版社、1956)とか、渡辺信夫『宗教改革者カルヴァン』(キリスト教少年文庫10、新教出版社、1962)など。

小平尚道『カルヴィン』(人と思想シリーズ、日本基督教団出版部、1963、302頁)は、生涯と思想の二部構成。生涯(約100頁)を4期に分け、それぞれカトリック教徒、ヒューマニスト、プロテスタント、宗教改革者として特徴づける。独自の見解(というか推測)があって、その妥当性は別にして、おもしろい。しかし、第二部の思想の方は読むに値しない。

J.D.ベノア(森井真訳)、『ジァン・カルヴァン――生涯・人・思想』、日本基督教団出版部、1955(19331,19482)、4+326頁。
エミール・ドゥメルグの七冊にわたる大著の「精髄」として、「直接にこの宝の山から宝を掘出すことの出来ない人々のために、この山のいくつかの鉱脈から貨幣を鋳造する」(「初版序言」、p.3より)ことを目的として書かれた。「あのような状況にあってあのように生きざるをえなかったカルヴァン」(訳者による「あとがき」、p.323)を描く。pp.1-163が伝記、その後、性格等を率直にまとめたのち、牧者としてのカルヴァン、神学者としてのカルヴァンを述べる。最後に、カルヴィニストの信仰・道徳、そして、「カルヴァンとわれわれ」。
古い翻訳だが、今でも読むべき。「専門家の手によるすぐれた伝記の一つ」渡辺信夫、『カルヴァン』、清水書院、p.192。
著者の表記について、訳者は後に「ブノワ」と言っている。さらに、「ブノワはストラズブールではベノワと呼ばれていたらしい」と記している。森井眞、『ジャン・カルヴァン――ある運命』、教文館、p.371。

新しいもの

C.エルウッド(出村彰訳)、『はじめてのカルヴァン』、教文館、2007、248頁、1995円。
ベルナール・コットレ(出村彰訳)、『カルヴァン 歴史を生きた改革者 1509-1564』、新教出版社、2008、564頁、6195円。
アリスター・E. マクグラス(芳賀力訳)、『ジャン・カルヴァンの生涯――西洋文化はいかにして作られたか』(上、下)、キリスト新聞社。
上:2009、300頁、3150円。下:2010、324頁、3360円。

その他

R.ストーフェール(森川甫訳)、『人間カルヴァン』、すぐ書房、1976。
久米あつみ、『カルヴァン』(人類の知的遺産28)、講談社、1980、428+4頁。
pp.47-194の150ページ弱が「カルヴァンの生涯」。

3.ジョン・ウェスレー

John Wesley, 1703.6.28-1791.3.2
メソジストの一伝道者(瀬尾要造、小出忍、土屋順一訳)、『戦う使徒ウェスレー』、福音文書刊行会(いのちのことば社発売)、1963初版1971改訂再版、270頁。
ウェスレー伝の名著。巻頭に写真や図版がたくさん。
ジョン・テルフォード(深町正信訳)、『ジョン・ウェスレーの生涯』、ヨルダン社、1988(1930)、142頁、1400円。
読みやすい伝記。これも名著かな。

その他、ベージル・ミラー(湖浜馨訳)『ジョン・ウェスレー』(信仰に生きた人々シリーズ7、いのちのことば社、1983、157頁)は、中高生くらい向け。マリアン・カーリュー(蔦谷茂夫訳、瀬尾要造監修)『ジョン・ウェスレーの生涯』(福音文書刊行会(いのちのことば社発売)、1988、185頁)は新書判の易しい本。

M.エドワーズ(都田豊三郎訳)『ウェスレー兄弟――サムエルの息子たち』(ヨルダン社、1990、164頁)もある。父親の影響などがよく分かる。

神学思想まで少し踏み込んだ評伝としては、

野呂芳男、『ウェスレー』(人と思想95)、清水書院、1971、234頁、700円。
たぶん、現在新刊本で最も入手容易なウェスレーの評伝。

その他、野呂芳男では、古くは、『ウェスレー 人と思想シリーズ』(日本基督教団出版部、1963、261頁)。また、ウェスレーの神学を体系的に記した大作、『ウェスレーの生涯と神学』(日本基督教団出版局、1975、668頁)の第一部がウェスレーの生涯。最新は、『ジョン・ウェスレー』(松鶴亭出版部、2005、323+19頁、3675円)の第1章が生涯。

評伝としては、M.シュミット(高松義数訳)『ジョン・ウェスレー伝――回心への内的発展』(新教出版社、1985(原著1953)、483頁)が、回心までの生涯を記した本格的な伝記。原著は2巻本でこれはその第1巻の翻訳。第2巻の翻訳はいまだ出ていない。

峯野龍弘、『聖なる生涯を渇望した男 偉大なる宣教者ジョン・ウェスレー』、ヨベル、2010、158頁、945円。

清水光雄、『民衆と歩んだウェスレー』、教文館、2013、240頁、1995円。

W. J. エイブラハム(藤本満訳)、『はじめてのウェスレー』(イラストでよむ神学入門シリーズ)、教文館、2013、244頁、1995円。

4.ブルームハルト父子

父:Johann Christoph Blumhardt, 1805.7.16-1880.2.25
子:Christoph Friedrich Blumhardt, 1842.6.1-1919.8.2

カール・バルトに影響を与えた人物として、また牧会者として重要。

井上良雄、『神の国の証人ブルームハルト父子――待ちつつ急ぎつつ』、新教出版社、1982、470頁、4000円。
井上良雄『戦後教会史と共に』(新教出版社、1995)の中に、「ブルームハルトと私」(1975)、「ブルームハルトの魅力」(1982)という文章がある。
トゥルナイゼン(永野羊之輔訳)、「ブルームハルト」、原著1926(『トゥルナイゼン著作集6』、新教出版社、1987、pp.95-221)
子の方の神学的評伝。もとは新教新書85、1965。これとは別に、トゥルナイゼン(加藤常昭訳)『この世に生きるキリスト者』(新教新書33、新教出版社、1960)の中に、「クリストフ・ブルームハルト」というわずか14頁の小文がある。

5.シュヴァイツァー

Albert Schweitzer, 1875.1.14-1965.9.4
A.シュヴァイツァー(竹山道雄 訳)、『わが生涯と思想より』、白水社、1959初版1960第3版(1931)、235頁。
シュヴァイツァーの自伝。
シュヴァイツェル(波木居斉二訳)、『わが幼少年時代』(新教新書57)、新教出版社、1961初版、1996復刊(原著1924)、116頁、800円。
1984第17版の後、1996年に名著復刊第1集「祈りと証し」の10冊の内の一つとして復刊。「わが幼少年時代」と「コルマルの思い出」(原著1952)。
ハーマン・ハーゲドーン(原田義人 訳)、『シュヴァイツァー伝』、白水社、1957初版1964第12版(1954)、300頁。
ハーゲドーンはシュヴァイツァー伝の名著かな。
小牧治、泉谷周三郎、『シュバイツァー』(人と思想31)、清水書院、1967、191頁。
もっとも入手容易か。

古くは、野村実『人間シュヴァイツェル』(岩波新書青211、1955)。ほかに、森田雄三郎『シュヴァイツァー』(人と思想シリーズ=第2期、日本基督教団出版局、1973、328頁)も。笠井恵二『シュヴァイツァーその生涯と思想』(新教出版社、1989、426頁)は、装丁と頁数は他と比べて本格的だが、中身は読んでないので分からない。

6.ボンヘッファー

Dietrich Bonhoeffer, 1906.2.4-1945.4.9

「ボーンへファー」とか「ボンへーファー」とか表記されることもあるが、「ボンヘッファー」という表記が定着している。村上伸『ボンヘッファー』(人と思想92)清水書院、1991、p.10参照。

森平太、『抵抗と服従への道――ボンヘッファーの生涯』(新教新書89)、新教出版社、1964、354頁。
おそらく日本で最もポピュラーなボンヘッファー伝。巻末に文献表あり。2004年に新装版が出た3000円。版型が大きくなり、写真等が改められているようだ。森平太は新教出版社の社長を務めた森岡巌(もりおか・いわお)の筆名。
エーバハルト・ベートゲ、レナーデ・ベートゲ(宮田光雄、山崎和明訳)、『ディートリヒ・ボンヘッファー』(現代キリスト教の源泉1)、新教出版社、1992。2004年重版2625円。
ドイツの有名なロ・ロ・ロ伝記シリーズ。
ベートゲは『ボンヘッファー伝』(全4巻、新教出版社、1973-1974、2005年からオンデマンド)を書いている。さらに、E.ベートゲ夫妻とCh.グレメルス編(高橋祐次郎訳)の『ボンヘッファーの生涯――写真と著作による評伝』、新教出版社、1992、256頁、6601円+税。がある。
村上伸、『ボンヘッファー』(人と思想92)、清水書院、1991、242頁、560円。
「いわゆる伝記的な構成をとらず、いきなり問題の核心に踏みこむ方法を選んだ」「あとがき」p.216。「序 ボンヘッファーとは何者なのか」で、ベートゲにならってボンヘッファーの生涯を神学者、キリスト者、同時代人の三つに区分して紹介。「T 牧師が暗殺計画に加わるまで」は、「山上の説教」の解釈を通して彼にとっての「服従」の意味を探り、なぜ彼がヒトラー暗殺を決意して国防軍情報部に入ったかを明らかにする。Uはボンヘッファーをめぐる人々、Vは「ボンヘッファーの思想的インパクト」として『倫理』と『獄中書簡集』を挙げる。
村上伸、『ひかりをかかげて ディートリッヒ・ボンヘッファー――ヒトラーとたたかった牧師』、日本基督教団出版局、2011、120頁、1260円。ローティーン向けの伝記シリーズの第一冊目。

より学問的なものに、宮田光雄、『ボンヘッファーを読む──反ナチ抵抗者の生涯と思想』(岩波セミナーブックス51)、岩波書店、1995。この新版が、『ボンヘッファーとその時代――神学的・政治学的考察』、新教出版社、2007、430頁、3800円+税。

ポール・レーマンによれば、「生存者であれ、故人であれ、著者がその解説者や紹介者たちによってこんなに誤り伝えられているケースは珍しい。いわゆる「神の死」の神学者たちは、たぶんボンヘッファーを誤解した最たるものであろう。彼らは獄中書簡に貪欲かつ性急な情熱をもって飛びつき、ほとんど「ボンヘッファー学派」とでも言うべきものに連なったドイツの熱狂主義者に類するものをアメリカに生み出したのであった」ポール・レーマン(古屋安雄、船本弘毅訳)『キリスト教信仰と倫理』、ヨルダン社、1992(1963)の訳者あとがきp.245。

7.キング牧師

Martin Luther King,Jr., 1929.1.15-1968.4.4

おすすめ

猿谷要、『キング牧師とその時代』(NHKブックス699)、日本放送出版協会、1994、237頁、860円。
入手も容易でおすすめ。評伝。薄い本だが、おもしろくまとめてある。巻末に年表と有用な文献表あり。日本語版のある文献を、英語の著者・タイトル・出版社と共に示しているのがよい。
辻内鏡人、中條献、『キング牧師――人種の平等と人間愛を求めて』(岩波ジュニア新書221)、1993、213頁、780円。
ジュニア向けだが、読みやすい手頃な伝記。
梶原壽、『マーティン・ルーサー・キング――共生社会を求めた牧師』(ひかりをかかげて)、日本基督教団出版局、2012、122頁、1260円。
ローティーン向けの伝記シリーズ「ひかりをかかげて」の一つで、写真やイラストも多いが、おとなにも良い。9.11と3.11の経験後から、キング牧師は「この地球という一つの惑星に住むわたしたちが、「人間というひとつの家族として共に生きていくことがはたしてできるのだろうか」という課題」に取り組んだとして意義づける(「読者のみなさんへ」、p.6-8)。全11章。

やや古いが、良いもの

ウィリアム・R・ミラー(高橋正訳)、『マーチン・ルーサー・キングの生涯』(角川文庫2704)、角川書店、1971(1968)、462頁。
キング牧師の伝記で最初のもの。著者自身、黒人解放運動に参加していた。キング牧師の神学的影響、キング牧師を取り巻くキリスト教の状況、黒人社会の中での教会の役割などにも言及している。公立図書館で借りたが、古本屋で探したい。
リローン・ベネット(中村妙子訳)、『マーティン・ルーサー・キング――非暴力への遍歴』、新教出版社、1966(1964初版1965第2版)、292頁。
1964年までのキング牧師の活動。

その他

クレイボーン・カーソン編(梶原寿訳)『マーティン・ルーサー・キング自伝』(日本基督教団出版局、2001年、486頁、5500円)は、様々な著作、資料から再構成されたもの。分量、値段からして本格派向け。

評伝には他に、梶原寿『マーティン=L=キング』(人と思想104、清水書院、1991、254頁)があるが、著者のイデオロギーが強く出過ぎている。梶原の著作には『約束の地をめざして――M.L.キングと公民権運動』(新教出版社、1989、284頁、2200円)もある。梶原寿『御足の跡をしたいて――キング牧師における信仰のかたち』(新教新書261、2000、168頁、1200円)はどうだろうか。

マーシャル・フレイディ(福田敬子(ふくだ・たかこ)訳)、『マーチン・ルーサー・キング』、岩波書店、2004(2002)、252頁、2625円。ペンギン評伝双書からの翻訳。この双書は「伝記のイメージを一新する英米で話題のシリーズ」だそうだ。キングの乗り気のなさや不安、女性関係などにも触れる。他人の説教を盗用する癖まで語る。「この本の魅力は、キングの偉大さよりも、この若者が、意外にも小心で、見えっ張りで、弱気になったり、計算違いをしたり、女性を追いかけ回したり、らんちき騒ぎが好きだったりといった「日常」をかいま見ることができるところです」(苅谷剛彦による書評、朝日新聞2004.4.18)。一方で、彼の演説のたぐいまれな能力に注目している。「このように思想を行動に移すにあたって、キングが大衆を動かす力の根源となったのは、意識して身につけた学識ではなく、彼がもともと軽蔑していた五感、つまり、少年時代に教会の礼拝で聞いた魂を震撼させるような言葉遣い、その言葉からほとばしるエネルギーと生命力から受ける肉体的な感覚であった」(p.29)。訳者による後書きはないのは残念。代わりに小田実「髪の毛の色のことから」というおまけが付いているのは蛇足か。

R.バロウ(山下慶親訳)、『はじめてのキング牧師』(イラストでよむ神学入門シリーズ)、教文館、2011、250頁、1995円。

8.コルベ神父

Maximiliano Maria Kolbe, 1894.1.8-1945.1.23
川下勝、『コルベ』、人と思想122、清水書院、1994、231頁、620円。
コルベ神父と同じコンベンツアル・フランシスコ会の司祭による評伝。コルベ神父の書簡など一次史料の注が子細に記されていて信頼できる。巻末の年譜も詳細。必読。

そのほか、小崎登明『ながさきのコルベ神父』(聖母文庫、聖母の騎士社、1988、364頁、500円)は、コルベ神父とその周囲の人たちとの長崎での修道生活と出版活動の物語。マリア・ヴィノフスカ(岳野慶作訳)『アウシュビッツの聖者コルベ神父』(聖母文庫、聖母の騎士社、1988、290頁、500円)は、生い立ちからの主としてポーランドでのコルベ神父の略伝。

曽野綾子『奇蹟』(文春文庫そ-1-9、文藝春秋、1977(毎日新聞社、1973)、252頁、380円)は、コルベ神父の名による奇蹟が本当かどうかを訪ねて回った著者の取材旅行記。

9.その他、未整理

アッシジの聖フランシスコ

マザー・テレサ(Mother Theresa, 1910.8.26-1997.9.5)

1979年ノーベル平和賞。2003年10月19日列福。

ジョージ・ミュラー

金井為一郎『信仰の勝利者ジョージ・ミュラー』(いのちのことば社、1990、224頁、1800円)。
A.T.ピアソン(海老沢良雄訳)『信仰に生き抜いた人ジョージ・ミュラー』(いのちのことば社、2700円)。
ジョージ・ミュラー(松代幸太郎訳)『ジョージ・ミュラーの祈りの秘訣』(いのちのことば社、1100円)。

ハドソン・テイラー

ハワード・テーラー(舟喜信訳)『ハドソン・テーラーの生涯とその秘訣』(いのちのことば社、1950円)。

朱基徹(チュ・キチョル)

朴憲郁、『朱基徹――偉大な勝利の殉教者』(少年少女信仰偉人伝57)、教会新報社、1983、201頁、1200円。

閔庚培(尹宗銀、澤正彦訳)、『神の栄光のみ 殉教者朱基徹牧師伝』、すぐ書房、1989、340頁、2000円。

信州夏期宣教講座編(岩崎孝志、野寺博文、金山徳(キム・サンドゥク)、渡辺信夫)『主の民か、国の民か』(21世紀ブックレット30)、いのちのことば社、2006、178頁、1260円。2005年の第13回信州夏期宣教講座の記録。戦時中、神社参拝を拒否して殉教した朱基徹と、その息子朱寧震らの歩みをたどりながら、日本の教会のあり方とその宣教とを問い直す。「皇国史観とキリスト者の国体観」、「朱基徹牧師の抵抗権思想」、「韓国長老教会の初創期における神学的背景と神学校設立の過程」、「主の民の道――朱基徹父子の歩みの跡」。

その他、ヨハネ・井田・泉、「神社参拝問題と朱基徹の説教」(土肥昭夫教授退職記念論文集編集委員会編『キリスト教と歴史』新教出版社、1997所収)。

石浜みかる、『変わっていくこの国で――戦争期を生きたキリスト者たち』、日本基督教団出版局、2007、202頁、1785円。この第4章が朱基徹。

トゥールナイゼン

R.ボーレン(加藤常昭訳)、『預言者・牧会者エードゥアルト・トゥルンアイゼン』上・下、教文館。下:376頁、4410円。教文館による目次のページ

10.気になる神学者・伝道者・説教者の生きざま

内村鑑三、"How I became a christian"(英文)、警醒社、1895。
内村を理解するためには、「あまり解説書を乱読せず、まず本書の精読より始めねばならぬ」(高柳伊三郎、佐藤敏夫他編『キリスト教名著案内 上』(現代と教会新書)、日本基督教団出版部、1965の土肥昭夫の文)
鈴木俊郎訳『余は如何にして基督信徒となりし乎』(岩波文庫青119-2)、岩波書店、1935単行本、1938文庫化、1958改版。
たぶん岩波文庫版より読みやすそうなものに(見ていないが)、山本泰次郎、内村美代子訳、角川文庫、角川書店、1955、1969新訳。大内三郎訳注、講談社文庫、講談社、1961。鈴木範久訳・解説、白凰社名著選、白凰社、1972。
全集等の収録は、鈴木俊郎訳『内村鑑三著作集1 自伝的文章』(岩波書店、1953)や、『昭和文学全集45 内村鑑三、倉田百三、青野季吉集』(角川書店、1954)や、亀井勝一郎編『現代日本思想大系5 内村鑑三』(筑摩書房、1963)や、河上徹太郎編『明治文学全集39 内村鑑三集』(筑摩書房、1967)や、松沢弘陽編『日本の名著38 内村鑑三』(中央公論社、1971、1984中公バックス)や、内田芳明編『近代日本思想大系6 内村鑑三集』(筑摩書房、1975)や、武田清子解説『日本人の自伝3』(平凡社、1981)にもあるようだ。山本泰次郎編『内村鑑三信仰著作全集』(教文館、1976)では、第二巻にある。
内村鑑三の評伝はあまたあるが、いくつか挙げるとすれば、関根正雄『内村鑑三』(人と思想25)清水書院、1967。それから、小原信は、最初は中公叢書に書いた(『評伝 内村鑑三』1976)がさらに増補させてPHPから『内村鑑三の生涯――近代日本とキリスト教の光源を見つめて』(1992)、さらに加筆して、『内村鑑三の生涯――日本的キリスト教の創造』(PHP文庫)1997。鈴木範久は、『内村鑑三』(岩波新書黄287)1984。その後、『内村鑑三の人と思想』、岩波書店、2012、296頁、3360円。
渡辺善太(わたなべぜんだ)
「回心とその前後」(善太全集第5巻に収録)を読め。
「先生のお話は、ある意味では非常にむずかしいのだが、先生から溢れ出る力と、力強いそのお声と、めりはりのきいたその語り振りと、話の論理的一貫性とが一つになると、自然と会堂に磁場が生じ、聴衆はそこにすっかり吸いこまれてしまう。お話が終わった時には、私はいつも軽い陶酔からゆっくりとぬけ出る満足感を覚えた」(渡辺善太『わかって、わからないキリスト教』の編者、牧野留美子によるあとがき、p.226)
「渡辺先生の説教を聴いていると、聖書の言葉が起ち〔原文のまま〕上がってくる。立体化してくる。聴き手に向かって迫ってくる。この秘密を私たちも盗まなければならない」(加藤常昭『自伝的説教論』、p.43)
亀谷凌雲、『仏教からキリストへ――あふるる恩寵の記』、改訂第「4」版、亀谷凌雲先生図書保存会(発売:伝道文書販売センター)、1995、341頁、1900円。
亀谷凌雲は、1888.4.9-1973.3.16。初版は、福音館書店、1951。英語タイトル:From Lutus to the Cross
1.前史
亀谷凌雲述、『佛教より基督教へ』、近江兄弟社基督教通信學會、1918、27頁。『基督か阿彌陀佛か』、福音書館(下関)、1920、7頁。 いずれも同志社大学図書館。ページ数からして、トラクトのようなものか。
2.念仏より基督へ
金澤にあったメソジスト系の書店であった金澤福音館(現在の福音館書店の前身)から、『念佛より基督へ』というタイトルの本が1932年に出ている(1+6+3+201頁)。1933第2版。戦後もしばらく出ていたようだ。福音館書店(金沢)、1947年。
3.佛教から基督へ
おそらく、福音館書店が東京に移って、100ページほど加筆して、タイトルを『佛教から基督へ――溢るゝ恩寵の記』と変えて、1951年に出版された。
『佛教から基督へ――溢るゝ恩寵の記』、福音館書店、1951、初版。
たぶん1952年に第2版。序に「第2版の出版に当りて(1952.4)」が記され、巻末に、新聞雑誌、読者の反響を掲載。
1954.11第3版。1957第4版。1957.8第5版。巻末の反響の掲載は第5版でさらに追加された。
4.仏教からキリストへ
1963第14版でタイトル表記を変更。
『仏教からキリストへ――あふるる恩寵の記』、福音館書店、1963、第14版、4+6+341頁。「第十四版発行に際して」という文が付く。
1970第21版。1972第23版。
5.図書保存会
著者没し(1973)、その3年後に日本基督教団富山新庄教会内に亀谷凌雲先生図書保存会が発足し、改訂第1版(通算26版)、亀谷凌雲先生図書保存会、1976。巻頭に「住職差免状」の写真などが増えた。1984年の改訂第3版(通算28版)で、当時の富山新庄教会牧師桂島祐三の「改訂第三版発行に際して」が付いた。1986年には改訂第4版(通算29版)発行。その後、版下・装丁を新しくして、1995年改訂第5版(通算30版)。・・・のはずだが、奥付には「改訂第4版(通算30版)」と書いてあるし、当時の富山新庄教会牧師宮本義弘の「改訂第四版発行に際して」が付いている。これには巻末に聖句索引が付いたし、住職差免状の写真はきれいに撮り直されているぞ。
ちなみに、私が現物を見たのは、第20版1969、改訂第4版(通算29版)1986、改訂第4版(通算30版)1995。
榎本保郎、『ちいろば』、聖燈社、1968、214頁。
三浦綾子『ちいろば先生物語』(朝日文庫or集英社文庫or主婦の友社)もよかった。ちいろば本は他に、『今は恵みの時』(日本基督教団出版部、1965)、『ちいろば余滴』(1972)、『ふつか分のパン』(1974)、『祈りと瞑想への道』(1976初版1977増補再版)、『わたしの出会った人々』(以上聖燈社)、『教会づくり入門』(教文館)、『旧約一日一章』『新約一日一章』(以上主婦の友社)。他に、『ちいろば牧師アシュラムを語る』(榎本牧師記念出版委員会、1998)というのがあるようだ。
桑田秀延、『神学とともに五十年』(桑田秀延全集第5巻)、キリスト新聞社、1974、422頁、4600円。
東京神学大学の沿革と歴史がよく分かる。また、桑田の神学論や現代神学の概説にもなっていて興味深かった。
賀川豊彦、『復刻版 死線を越えて』、PHP研究所、2009、463頁、1575円。
続編もあって全部で上・中・下の三巻となる。中巻は「太陽を射るもの」、下巻は「壁の声きく時」。
初版は、改造社1920年。その後、角川文庫1953年、キリスト新聞社1971年、社会思想社(現代教養文庫1101-1102)1983年など。さらに、今吹柳乃介監修『死線を越えて 復刻改訂版』(上・下)、今吹出版社、2008。
『現代日本文學全集 第59篇』(改造社、1931)、賀川豊彦全集刊行会編『賀川豊彦全集 第14巻 死線を越えて』(キリスト新聞社、1964)、『近代日本キリスト教文学全集7』(教文館、1977)などにも収録。
辻宣道、『嵐の中の牧師たち――ホーリネス弾圧と私たち』、新教出版社、1992、216頁、1900円。
戦時中のホーリネス弾圧とそれに対する筆者の父の行動に端を発した教会観の形成と教団論。毎週の週報に書かれた小文を集めた『ピスガに立ちて』(日本キリスト教団静岡草深教会、1995、332頁)もおもしろい。
“辻宣本”は他に、毒舌の『教会生活の処方箋』(日本基督教団出版局、1981、232頁、1300円)は有名。その他、『教会が強くなるために』(日本基督教団出版局、1998、206頁、1800円)。『その時の祈り』(日本基督教団出版局、1988、256頁、1350円)という祈り集の本もある。
本田弘慈、『キリストの愛に生きて』、いのちのことば社、1993、212頁、1900円。
81歳までの自伝。軍隊の経験、戦後長男を三歳で亡くし、そして伝道への召命を堅くしてゆく箇所は、感動する。1912.3.31-2002.4.6
アーサー・ホーランド、『不良牧師!――「アーサー・ホーランド」という生き方』、サイト出版(いのちのことば社発売)、2001、381頁、1500円。
帯によると「こんな熱い男、見たことない!」。第4章の新宿で路傍伝道を始める話しは、何度読んでもおもしろい。なんと1年経たないうちに文庫化。文春文庫、2002、368頁、562円。
加藤常昭、『自伝的説教論』、キリスト新聞社、2003、380頁、2000円。
「説教論」とあるが、38歳までの自伝。「キリスト新聞」の連載にさらに加筆・修正したもの。説教者としての自伝は、説教論となり説教者論となる。さらに、説教が教会と切り離すことができず、また、説教者は伝道者でもあるゆえに、自伝的教会論でもあり自伝的伝道論でもある。この人も型破りな伝道者か。いや、型を破ろうとしなくても、自然と破けてゆくのか。カトツネは、東ドイツから危険人物とされていた。いろんな人物との関わりが出てくるので、人名索引でもあればよかった。
「私は、自分の召命の出来事に、改めて畏れを抱くことを学び直した」(p.56)。
新井登美子、『現代牧師烈伝――治癒と希望の物語』、教文館、2006、262頁、1500円。
10人の牧師の生き様。佐藤敏(カナン・キリスト教会)、宮本俊一(日本聖契キリスト教団グレース・ミッション・チャーチ)、勝又慶信(日本聖契キリスト教団酒匂キリスト教会)、小坂忠(日本フォースクエア福音教団秋津福音教会)、関根一夫(ミッション・エイド・クリスチャン・フェローシップ)、渡辺暢雄(日本バプテスト連盟)、尾毛佳靖子(日本基督教団戸塚教会)、山中正雄(日本アライアンス教団千葉キリスト教会)、平良愛香(日本基督教団三・一教会)、高橋敏夫(春日部福音自由教会)。